〜菅直人新総理が食べたカイワレ大根を思い出して〜
(人間、動物を渡り歩く病原性微生物)
政治が動きました。
鳩山首相に代わって、6月8日菅直人さんが総理大臣に就任し、新しい内閣が発足しました。
菅直人さんの下世話なイメージの3つをあげますと。エイズ、カイワレ、お遍路さんとなります。
エイズは厚生省に責任ありとして、深々と頭を下げた厚生大臣時代の菅さん。
カイワレは、1996年大阪堺市で発生した、O157中毒事件の主原因がこの野菜にありとし、厚生省と自分の発言の反響で、カイワレ業者に多大な損害を起こさせ、その発言を訂正し、大きな口をあけてカイワレ大根を食べるパフォーマンスを示した菅さん。
お遍路さんは、厚生省の社会福祉事務所からの年金未納問題が発覚、頭を丸め四国88箇所の巡礼姿の菅さん。
こんな菅直人さんのイメージが今でもあります。
中でもカイワレ大根とO157は私の記憶にかなり鮮明です。
学校での集団中毒が病原性大腸菌O157によるもので、その原因菌が食材として使われた、カイワレ大根から検出されたと言うニュースは、カイワレ大根が菌の発生元と誤解され、カイワレ業界が大打撃を受け、その後遺症は長く販売の低迷が続きました。
しかしながら今日現在、O157の発生が、カイワレ大根と思っている人は、一人もいません。
なぜならば、その後もあらゆる場所、あらゆる季節、あらゆる食材でこのO157による食中毒は頻発しているからです。
最近の話をすれば、6月はじめ三重県の高校で120名ほど、O157菌による
その感染ルートは目下調査中のようですが「腸管出血性大腸菌O157による食中毒」との新聞記事は久しぶりでした。
ところが調べてみますと、年間を通じてあちこちで、かなりの発生件数があります。
レストランであったり旅館であったりまた家庭であったりしますが、小人数や個人だったりで、新聞が記事にするような事件ではなかったので、O157に出会わなかっただけのようです。
ことに最近は死亡にまで至ったケースがなかったので、大事件にならなかったのです。
その意味では菅さんがカイワレ大根を食べた、1996年7月の学校給食による集団発生では、発症者6500名を越え、死亡が3名も出た大事件だったから、世間を騒がしました。
当時カイワレ大根が疑われた要因のいくつかに、牛と牛の糞がありました。
と言いますのもこのO157は動物の腸内に生息し、その動物には危害を加えないが、ひとたび人間の腸内に入りますと、激しい痛みと下痢をおこし、中には出血便に及ぶ重症となります。
家畜や動物の中でも、牛がO157菌多くを持つ保菌家畜で、それが排泄する牛糞がもっとも危険とみなされていました。
以前アメリカで、ハンバーガーが原因と見られた集団食中毒の発生があり、多くの死者も出し大事件がありました。その牛肉から大量のO157菌が検出され、牛肉と牛糞を肥料として使用した野菜類が、要注意食材として公表された過去があります。
それゆえ、大阪堺市の発生で、いち早く牛糞説が流され、カイワレ育成の水耕栽培用の水が、牛糞に汚染されたとの風評が出てしまったのです。
しかしに近所に牛舎も牛糞もない状態で、汚染するはずもなく、この間違い報道は立ち消えになりましたが、カイワレ業者の損害は報われませんでした。
ただし調べていくうちに、カイワレ大根の種がアメリカから輸入されたもので、その種にO157の菌が付着していた可能性が強いとの発表が報道でなされ、おおいに考えられることと感じました。
この事件があって、食中毒の恐ろしさと、目に見えない有害微生物の存在がいかに危険で、健康から生命にまで影響を及ぼすものと、一般の市民も有害菌の知識と、食中毒の恐ろしさを勉強もしました。
それがため、人々の衛生観念の向上はいやがうえにも高まり、食品の安全安心が強く叫ばれ、O157だけでなく、卵や肉類のサルモネラ、カンピロバクター、黄色ぶどう状球菌、魚貝類のビブリオ菌などの汚染を、いかに食卓に上げないかの要望が強くなり、生産段階での作業の衛生対策はより真剣になったことは確かです。
何かの事件をきっかけに、それを教訓として、再発を回避する意識が高まることは、決して無駄なことではないと思います。
しかしこれらの中毒菌の多くが、動物由来のもので動物の腸内に生息し、畜産物を汚染させることが分かっているので、抗生物質などを使用して抑制すればよいでしょうが、どっこいそう簡単に行くものではありません。
薬品の種類によっては、いったんは効果があり有害菌は姿を消しますが、時間を経過すると瞬く間に再繁殖します。
それを抑制するとなると、継続的に薬品投与となり、かえって腸内にいる善玉菌をも殺します。そうなると発育もマイナスになるし、悪玉菌の発生しやすい環境となり、かえって被害が大きくなります。薬品代も馬鹿になりません。
それより薬の使いすぎは、治療薬の抗生物質や抗菌剤の多くが、肉、卵に残留し、それを食べる人間が、薬の効かない耐性菌を作る基になりかねません。それゆえ、飼料安全法、食品安全の面からも規制されてます。
そこで私たちは、これらの食中毒菌のサルモネラ、カンピロバクター、O157菌等を抑制する新しい物質(有用菌)を開発し、鶏、豚、牛、さらに養殖魚にまで使用させ、畜産物の安全を担保しています。
そのメカニズムは、病気の原因菌の悪玉を、善玉菌で追放しようとするもので、ことにこの善玉菌が生産する特殊な酵素が、悪玉菌の細胞壁を溶解し、知らずのうちに悪玉菌が繁殖が出来ないようにする機能が特徴です。薬品を一切使わなくても動物の腸管内を健全にしますし、もちろん安全で人間や動物だけでなく、環境の正常化にも寄与するものです。
この方法はかなりの成果を収め、多くの畜産農家が使用していますので、これらから生産された畜肉や卵からは、O157もサルモネラも検出されず、被害はないと思います。
さて、また食中毒のシーズンとなりました。
細菌やウイルスによる食中毒は、季節を問わず発生はしていますが、なんと言っても湿度が多く、温度が高い6月から9月までの発生件数は断トツです。
O157中毒の発生も、統計的には夏場が多く、菅総理が食べたカイワレ大根も14年前の7月でした。
牛と牛糞、あるいは豚と豚糞といえば、病原性の細菌感染症でないが、口蹄疫という強烈なウイルス感染症が目下宮崎で発生し、牛と豚に大被害を与えています。
この口蹄疫のウイルスは、人間への感染の心配はないものの、あらゆる病原菌やウイルスはなにかしらのハズミで、人間へ感染する菌に変換をしないとは限りません。
地球上に無限に生息するこれら病原性微生物は、あるとき突然変身し人間に襲ってくることが過去ありました。エイズにしろインフルエンザにしろ、以前は動物だけに感染していた病原菌です。
それが何かのきっかけで、中間媒体を経て人間の細胞の中で繁殖し、細胞を破壊する恐ろしいものに変身したのです。
大腸菌はご存知のように私たちの大腸に常在している菌です。その中のいくつかが宿主である人間の腸の細胞を破壊する悪玉に変身したのです。ところが中間宿主の牛や豚の腸内では、悪さをしません。同じようにサルモネラ腸炎の菌も、鶏には危害を加えませんが、卵を通じて人間の腸管で繁殖しますと、腸炎を起こします。
このように同じ菌でも、動物によって有害であったり、無害であったりの菌がたくさんいて、それらの菌はお互いに宿主を変えながら、自分たちの仲間を増やそうとします。
それだけに有害菌との戦いは、生物が生存する以上、エンドレスに永遠に続くでしょう。だからといって、ウイルスや病原菌を撲滅するために、薬品や化学物質の多用しても、かえって病原菌の抵抗力を強くし、またはそれに打ち勝つように変性し、薬剤の効かない耐性菌となって、跋扈することが最も恐ろしいことです。
O157も抗生物質で対応できる病原菌ではなく、薬品投与によってはベロ毒素を出し。返って病状を悪化させるケースも見られます。
近い将来、現在動物に使われる私たちが開発したような善玉菌が、人間にも使われO157はじめ、サルモネラ、黄色ぶどう状球菌、カンピロバクターなど中毒菌を、やさしいく副作用のない抑制剤として使われることも必要です。
これらの善玉菌は、悪玉菌の住処を狭めやがて腸内から静かに退散させる、抗生ではなく共生しながら悪玉菌の存在を排除する、やさしい副作用のない治療剤となります。
動物への使用は飼料に添加し、毎日摂取していますので、いついかなるときにも悪玉菌の攻撃から守っています。人間も習慣的に毎日何らかの形で摂取し、健全な善玉菌優位な状態を保つことが、ひとつの中毒対策ともなります。
今日でも、乳酸飲料、ヨーグルト、納豆などにもこれと同じような力はありますが、悪玉菌による中毒を完全に防ぐほど、強いものではありません。それでも腸内の善玉菌を元気にさせる、ひとつの予防法でしょう。
さてさて、この夏も食中毒に注意し、元気に過ごしましょう。