〜恐竜時代から大氷河の下で長期熟成〜
(カナダの篤農家はフミン物質だけで有機穀物)
カナダ、カルガリーの空は抜けるように青く、その青い空から真夏の太陽がギラギラ照り付けていました。
見渡す限り果てしない平原を、車は120キロのスピードで走ります。
道路をはさんだ両側は、芽が伸び始めた麦畑が延々と続き、ところどころに真っ黄色な花を咲かせる菜種畑が目に飛び込む、かなたの丘陵に肥育牛の群れがたむろし、住居とサイロが点在する、カナダの典型的な農場地帯の中を、車は走ります。
カルガリー市内から南へ3時間、レスブリッジ市内を過ぎてまた1時間、私たちは目的地ミルクリバー(MILK RIVER)へようやく到着。
ここはすでに国境の町、隣国のアメリカ モンタナ州が指呼の間に見える場所です。
「このミルクリバーは、太古の昔、氷河時代にロッキー山脈方面からの氷河の流れが刻んだ爪あとで、川を取り巻き岩と石が切り立ったように林立している、奇岩の景観が見ることが出来る」
私たちを案内する、FRANK WU(フランク ウー)博士の説明を聞きながら、ミルクリバー案内所を訪ねました。
まず驚かされるのは、肉食恐竜ティラノザウルスの立像です、高さ5メートルほどに縮尺されているとはいえ、案内所の横にシンボルのように置かれますと、見学者のイメージはふくらみ、太古の昔の恐竜とミルクリバーと、このあたりの草原とののかかわりを想像します。
たしかにこの地方は恐竜の生息地と予測できる恐竜化石の数々が出土し、この近くには恐竜博物館として世界的に有名な、多数出土した化石群発見の地帯もあります。
恐竜が地球上に生息したのは1億年前から5千年前ほどですが、その同じ地層に近いところから、私たちが研究したいと思っている、フミン物質の埋蔵層が横たわっていることも、空想の世界が膨らみます。
このミルクリバー周辺のあるところが大事で、日本、韓国で販売しているフミン物質が、想像以上にさまざまな有効成分を持っていることが、恐竜の生息した地域と時代、ロッキー山脈とミルクリバーこのつながりが、大きなヒントのひとつかもしれません。
いずれにしろ、このフミン物質の生産現場を、WU博士は案内しようとしています。
と言って特別な発掘抗があるわけでなく、地表から10メートルとか20メートルの地下に、このフミン物質は眠っているので、それを露天掘りで採掘し、その後は同じ土質の土で埋め立て、現状復帰しますので、荒々しく掘り散らかした採掘場所は見当たりません。
それゆえに幾重にも続く麦畑、牧草地、岩石の露出地の中に、ひっそりとこの鉱区があるので、何処がフミン層か単なる土の層か専門家が見ても判定しにくい。
それだけ目立たない、自己主張の少ない物質がフミンですが、これがとてつもない力を持っているのですから驚きです。
実際、誰もがこんな不思議な物質が、草原の下に埋蔵されてるとはつい近年までは知りませんでした。
ただこの土地の農民は昔から、この地方一帯で育つ肥育牛が、丈夫で肥育率が高くまた特別なおいしさがあり、さらに穀物の収穫も肥料なしで収穫量の多いのが不思議に感じていたらしいです。
WU博士の話によりますと、黒い土がある所の農作物が特別収穫がよく、その一帯の牛の肥育が優れていたとの噂があったようですが、誰もが偶然としか考えず、あらためて追求しようとはしなかったようです。
その理由は、極限られた狭い場所だけにその効果が見られ、その周辺多くの農場はなんら変わらなかったからです。
この話を友人から聞いたWU博士は、大変興味を抱き早速にミルクリバーを訪問し、噂の土地を調査、験し堀をしてみてその黒い土が、石炭でも亜炭でもなく、特別な炭化過程の物質であることが気がつきました。
分析してみますと有機質が多く、有機酸のフミン酸、フルボ酸の含有も高いのに驚かされ、この物質を世に出し新しい農業文化を創ることが、生涯にわたってのライフワークになるだろうと決心したようです。
その決心をさらに後押しするようなきっかけになったのは、5000エーカー(5千町歩)の麦生産をしている、この地方の篤農家アラン・ガルフとの出会いでした。
この篤農家は、栽培が難しい古代麦のKamut(カムート)生産農家で、健康な土づくりを標榜、一切の化学物質を使わず、何年にもわたっての有機農法実践家として知られていました。
この農場が、すばらしい収穫量を毎年上げており、その元にいなっているのがこのフミン物質を含んだ土づくりにあったからです。
さらに驚くことは、フミン物質を使い続けると、雑草がすっかり消え、除草剤の必要が完全になくなる不思議現象もありました。
この事実はまた項を改めて説明しますが、簡単に言いますと、雑草と土の中の栄養素の相関関係、相克関係が、雑草を強くしたりその逆に雑草の生育を抑制する、おもしろい働きを土そのものがするようです。
その働きを作り上げ、土壌の性質を変え農作物だけが生育する畑にしたのは、この黒い土フミン物質のようです。
ここの事実を聞かされたら、WU博士でなくとも興味を持ちます。
実際、日本と韓国で農業に使用し、収穫量の増加と農薬の低減は実証済みで、使用した農家はすべて今後の継続を望んでいます。カナダの篤農家の話が本当なら、使い続けていると雑草対策に除草剤も必要なくなることになります。
化学肥料も農薬も除草剤もまたは殺虫剤まで、化学製品の除去が完全に出来たなら、江戸時代の作物作りのよう、農業の原点に返ることになります。
フミン物質がその役目を何処まで果たしてくれるか興味のあるところですが、農業者がこのフミンの持っている力を信用し、実践に取り入れるかどうかは未知数です。
化学物質の使いやすさと農薬の実績は、そんなに簡単に変われるものではなさそうです。
しかし、今まで使用した農家の実績は、収穫量の増大と生産コスト低減からみて、かなり儲かる生産物となっていますので、日本の篤農家も、近い将来おそらくチャレンジすると期待はします。
WU博士の言葉を借りれば、世界中の石炭が産出する地域にフミン物質を含んだ、泥炭、亜炭などがあり、それを抽出してフミン酸を取り出すことが出来るので、多くのフミン物質は、世界各地で使われていると言います。
ただ、このミルクリバーの草原の下にあるフミン物質は、75%のフミン酸、フルボ酸を含む優れもので、その有効成分と機能性は計り知れないと強調します。
たしかに薬の代用から、除草剤無用までの力は、カナダのミルクリバー産をおいてほかにないと私も思います。
ただしこれは薬でも肥料でもなく、フミン物質が持つマルチな機能性が、使用者にさまざまの利益をもたらしているだけです。
ある人は肥料代わりに散布し、ある人は農薬代わりに噴霧し、ある人は発芽促進に種苗を漬け込み、ある人は水の浄化に、ある人は消臭目的で使用し、ある人は畜肉の味向上に、さらに疲労回復に、化粧品に、入浴剤に、健康食品へと目的は多岐にわたります。
なんと多機能物質であることでしょう。
「この地帯のフミン物質がなぜこんなに多機能なのですか」こんな質問もしたくなります。
「それはカナダと言う立地条件と、ロッキー山脈のおかげでしょう、もうひとつ想像ですが繁殖していた木々や草花の違いがあるかもしれません」
ご存知の方も多いと思いますが、カナダの大地は氷河が作った大地といっても間違いがないほど、氷河の爪あとが多く残る大地です。おそらく何万年、何千年と厚い氷河の下でカナダの大地は眠り続け、やがて地球の気候変動で氷河が移動し、各地に湖と池、河川と渓谷、切り立ったような絶壁と岩石を残しているのもその証拠です。
この地殻変動と大氷河が、埋もれた草木をゆっくり熟成、発酵、触媒など生物的化学変化で性質を変えさせ、思わぬ自然機能物質を作り上げたと想像します。
ことに峻厳な山々が連なるロッキーが、大氷河を作り、南に押し出し、その力の中でミルクリバーのこの地帯の一箇所に、神秘的なフミン物質を堆積させ作り上げたと推測します。
だからカナダでも、ロッキーの麓にあることが重要で、トロントの周辺、ケベックの近くでは、同じカナダ大氷河でもダイナミズムの違いがあるようです。
私たちはミルクリバーのほとりに立ち、土気色に濁りのある川面を眺めながら、この色や濁りがミルクのそれと同じに感じ、ミルク川と命名した先人たちに思いを抱きました。
当然その頃は先住民族のカナダ人で、この広い草原にはバファローの群れをなし、ゆっくりとした時間が流れていたはずです。
そんなゆっくりとした時間の中で、丁寧に土の中で熟成したのが、私たちが命名した「カナディアンフミンHNC」だったのです。
そして現在ようやく、地上に掘り出され、産業の中で役立つ物質となったのです。
19時を過ぎようとした時刻にカルガリーに帰ってきた私たちですが、サマータイムのカナダまだ太陽は西の空から強烈に照り付けていました。
「黒い土の草を食べて育ったカルガリーの牛肉をぜひ食べたい」私は率直にWU博士に注文しましたが、残念、ほとんどのステーキレストランは、アメリカ、カナダのカウボーイたちに占領されていました。
当日をはさんで1週間、北米のカウボーイフェステバルがこのカルガリーで開催され、パレードからロデオ競技など、約30万近い人々が盛り上がりを見せていたさなかでした。
カウボーイたちの胃袋を満足させるのは、味で定評のあるカルガリービーフに群がるのもむべなるかな、そもそもカウボーイは牛肉生産者、牛肉の良し悪しを見分けるのはお手の物、その連中が評価する地元の肉が、黒い土で育った牧草を食べた牛だとは誰も気がついていないでしょう。
それだから、目立たない隠れた脇役のフミン物質の存在が輝かしく思えるのです。