〜入国禁止、高熱を検知された台湾空港検疫〜
(39.5度の発熱はインフルエンザか?)
9月6日、先週の月曜日午後7時ごろ、私は台湾国際航空の桃園飛行場(蒋介石飛行場)の入国(入境)通路を歩いていました。
入国審査所(Immigration)の前に入国検疫(Quarantin)があり、その検疫所の前を歩いていた私は、女性検疫官から「こちらへきてください」有無を言わさず止められました。
原因は熱センサーに感知された私の体温でした。
「やはりつかまったか」覚悟はしていたものの、検疫の女性検査官の
体温計で計られた数字が、38.6度との検温温度に肯定のサインを出さざるを得ませんでした。
一瞬これは入国拒否され、その場から帰国命令が出されるかと危惧しましたが「ただの感冒です」日本語と英語の両方で、発熱の原因を話しました。
残念ながらその女性は英語と日本語が分からず、私も中国語が出来ませんので、用意されていた日本語で書かれた質問文章を読んで、病状と今までの経過を答えます。
「いつから発熱があったか」「咳は出るか」「のどは痛いか」「筋肉は痛いか」「関節は痛いか」「鼻水と痰は出るか」「倦怠感と疲労感はどうか」などなどの質問事項です。
これらの質問はそのほとんどがインフルエンザ特有の症状で、インフルエンザの疑いでの取調べと推察も出来ました。
「発熱は2日前からだが、元気だし仕事だから台湾に来た」こんな意味は相手も了解したようです。
その他の症状についてはすべて「ありません」との答えに「分かりました、大丈夫です」ようように検疫を通過することが出来ました。
しかし実際は、そんなに元気ではなく、気分も優れませんでした。
成田空港4時40分発の中華航空は約3時間30分ほどで台北に到着します。
この3時間30分の間に夕食が出て、あとはテレビを見たり、本を読んだりの自由な時間ですが、食事もあまりとらず、毛布をかぶってうとうとしている間に到着し、熱があることを承知で、検疫所の前を通り抜け、あわよくば検知されないでいてくれたらと思いがありましたが、優れた熱センサーの高感度の測定で、見破られてしまったに過ぎません。
この発熱を感じたのは、前々日の9月4日の夕刻です。
その日、親しくしている取引先の営業責任者が、入院している名古屋の大病院へ見舞いに行き、帰宅したのが17時ごろ、その日も真夏日の35度を越える暑さで汗をかき、疲れたのでシャワーを浴びているとき、急に寒気を感じ急いで体をふいて検温したら38.5度の高熱であることを知り、夕食もそこそこに床に就き、再度夜中に検温してみると39.5度、驚くような高熱に、夏布団の中に包まってじっとしていました。
いつの間にか眠りに入り、たくさんの汗をかき、翌日朝方には平熱近くなっていましたが、その日の午後また38度を越える熱を発していました。
発熱で苦しんだ土曜日と日曜日を過ぎ、6日の月曜日の朝体温は36.5度と平熱に戻り、これでは台湾行きも大丈夫と、機上の人となったのです。
ところが午後から夕刻、そして夜になると熱が高くなり、その結果台北空港の検疫に止められました。
私も一時あまりの高熱が出るので、インフルエンザの疑いも持ちましたが、咳も頭痛も関節の痛みも筋肉痛もないので、単なる風邪(感冒)だろうと判断をしていましので、検疫でもそのとおりの答えをしました。
家の人の意見では、夏の暑さの後遺症で熱中症の症状のひとつとして、発熱をしたのだろうと推測されましたが、それも違うような気がしました。
ただ、朝、昼、晩と時間経過による発熱の乱高下は、風邪にしても少し気になるところです。
高温の夏、1日も休まず仕事をし、真夏の太陽の下でゴルフをしたり、体はだいぶ無理をしています。
その無理の疲れがたまった後遺症だと言えないこともない気もします。
そもそも私たちの体温は、脳内の視索前野と視床下部の体温調節中枢でコントロールされています。
その調節機能を狂わせる要因には、外部要因と内部要因があります。
外部要因のもっとも顕著なものは、外敵異物の体内侵入です、その代表が細菌とウイルスです。
風邪を例に取ると要因はウイルスで、体内に侵入し上皮粘膜などで増殖します。
これは体内の細胞にとっては異物です、その異物の増殖を防ごうと白血球などのインターロイキンがサイトカインの働きで、脳内血管内皮細胞で、発熱合成酵素を作り体温を上げようとします。
その働きはウイルスなどの異物の増殖適温域より体温を上げることによって、増殖を防ごうとする自然治癒力反応と、また体温を上げて免疫系の活性を刺激し、ウイルスを退治させようとする人間の恒常性です。
ですから発熱は病気に対する自然的防御反応で、発熱がなかったらウイルスなどの体外異物は繁殖を止めなくなります。
一方、内部要因は、急性の肝炎、胆のう炎、急性すい臓炎、虫垂炎など急性のものと、膠原病、リュウマチ熱など、慢性化したものがあります。
このような発熱は、患部への直接的治療により発熱を抑えることが大切ですが、発熱と痛みが体の危険信号を発しているので、発熱をおろそかに見過ごしては、手遅れにもなります。
いずれにしろ私たちの体温は、36.5度前後が平均で、それを1度以上上回りますと発熱と診断します。
発熱は多くに人に「寒気(さむけ)」をもようします。
その寒気は、侵入した発熱物質のウイルス、細菌に反応し体温を上げようと、まず皮膚の血管を収縮させ、皮膚や手足に寒気と震えをおこさせます。
これはウイルスを増殖させない体温に上昇させるための前駆作業のようで、手足が冷たいと体温を上げて温めようと、発熱も活発化し高熱となり、ウイルスを抑える働きが強くなります。
高熱が極度に上昇すると、人間の体は逆に体温を下げようと汗をかきます。
このとき血管は拡張し血流も活発、発汗作用も活発になり、それにつれて体温も下がり、体温設定も新しく設定され、発熱もなくなります。
こうみますと、発熱は病原菌を増やさないための大事な生態防御反応で、解熱剤も飲まずにじっと発汗作用が起こるまで我慢する事が大事になります。
ちなみに解熱剤のアスピリンは、サイトカインの働きで出来る熱を出す合成酵素を作らせないので、熱が出ません。
熱は出ないけどウイルスも死なずに残ることになります。
ただ、発熱は防御反応で大事な治癒力の作用と言いましても、発熱による体の消耗と精神の錯乱もありますので、熱がいつまでも高く問題が発生しそうなときは、医者の指示を受けて、解熱剤投与も必要でしょう。
あくまでも対処療法への考え方の問題で、安静、部屋の温度と湿度の適正管理、発汗作用、薬と投与法、栄養補給など、こまごました発熱に対する処方があります。
たまたま私は熱があるままに台湾に訪問しましたが、こんなことは厳に慎まなければいけないことで、本来ならば38.6度以上の熱がある場合、安静が必要でしょう。
それが当然ですが、私も体にかなりの負担がかかるはずが、幸運なことにそれをあまり感じなかったことが不思議です。
到着の日のホテルのベットは、枕がしっとり濡れるほど汗をかき、移動した翌日のホテルでも、びっしょりと汗をかいて持参した下着を何回も取り替えたほどでしたが、3日目には午後からも夕刻からも熱が出ず、平熱になったようです。
その間訪問した相手は5箇所、面会した人たちは30人以上、それもすべてビジネスの訪問先で仕事の相手です。
そんなとき人間は熱のあることも、体調不良のことも忘れるもので、相手も私が話さない限り高熱があるとは感じなかったはずです。
こんなことを自慢する必要もありませんが、病気を感じたとき病人であることをを意識したとき、人間は一編に病気に取り込まれてしまうのかもしれません。
病は気から、文字通り気持ちの持ちようで、病気と対峙する心の違いで、病気が治ったり、長引いたりするものなのでしょう。
ただ本来おいしいはずの中華料理の数々が、おいしさを感ぜず、いつもの勢いの良い乾杯を遠慮した食事は、味気ないものでしたのが、アルコールを欲しない体、これは体調が本格的でない証拠ですし、病気の現れでした。
そんなつらい旅行も終わり、帰国の途についた9日の飛行機の中では、極わずかですがアルコールも口にし、モニターテレビでの映画鑑賞する余裕も出ました。
ただアルコールは少しもおいしいと感じなかったことを報告しておきます。