アルコールと肝臓

〜我慢強い肝臓をこわすアルコール量〜
(休肝日も意味が無いたまの深酒)

忘年会シーズンです。

忘年会だけでなく、クリスマスパーティーから年明けの新年会、職場の飲み会、趣味同好の納会、友人たちとの交流会、何やかやと暮れから正月は、アルコールを親しむ回数が増えます。

なかには、無理をしてたくさん飲んだため、悪酔い、二日酔いで「もう二度とお酒は飲みたくない」と思いながら、翌日は付き合い酒のお供をして、さらにアルコール浸りになる、こんな繰り返しで体はバテバテになってしまう経験があります。

そんなアルコールは本来体にとっては有害物質です。

その有害物質を分解し無毒化にして、体から放出する臓器が肝臓です。

悪酔いを覚まし二日酔いを治すのが、肝臓が持っている機能と分解酵素の働きです。

アルコールは胃で20%吸収され、残りの80%は小腸に到達し吸収され、血液に溶け込み肝臓に運ばれます。

肝臓はアルコールを「アルコール分解酵素」で分解、アセトアルデヒドに変化させます。

このアセトアルデヒドは毒性物質ですが、肝臓にある「アルデヒド脱水素酵素」によって、無害な酢酸に分解され、血液を通して全身に運ばれエネルギーになりますが、最終的には炭酸ガスと水になって体外に排泄されます。

このアルコール分解酵素やアルデヒド脱水素酵素が少ない人は、少しのお酒でもアルコールが分解されないまま血液に溶け込み、酩酊状態になり危険です。

それを承知している酒に弱い人は、アルコールを飲む量を知っていて、自分でコントロールしますので二日酔いの経験はありません。

それゆえ二日酔いなどで肝臓負担を強いるのは、どちらかというと酒に強く、酒が好きな人で、アルコール分解酵素やアルデヒド脱水素酵素が良く働く人たちです。

しかしこんな人にも飲量に限度があり、その限度を越えますと、肝臓の分解する能力が追いつかず、アセトアルデヒドが脳や全身に回り、吐き気を模様したり、体の自立神経を麻痺させたり、思考力を失わせたりします。

そんな状態を続けていますと、さすがの肝臓も悲鳴を上げます。

そもそも肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。

かなり無理をして酒を分解したり、エネルギーを体に送り出したりして疲れても、肝臓は自覚症状を出して、痛いとか痒いとか熱いとか言いません。

そもそも知覚神経が無いので、それだけ我慢強い臓器です。

たとえば肝臓には3000億個を越える肝細胞があり、一部が疲れきって機能しなくなっても、他の細胞が代行し、また機能を失った細胞もその間すぐに再生する能力があります。

不幸にして肝臓に重大な病変が出現し、その一部を切除しても再生することが出来ます。

この我慢強さがかえって仇となり、無理をしてしまい、自覚症状が無いまま病気が進んでしまうことがあります。

あるとき定期の健康診断検査などで医師から、肝機能がかなり衰えていると危険信号を伝えられ、あわてますが自覚症状が無いので、あまり深刻にならず、酒の飲み過ぎかなと少し反省するくらいです。

もしこれが「最近疲れやすくなっていた」「食欲が以前より衰えた」「風邪でもないのに発熱がある」「朝歯を磨くとき、吐き気がする」「皮膚が痒い」「尿の色が濃くなった」などなどに気がついていれば、かなり肝臓が傷んでいることになります。

もし肝臓機能の働きが悪く、体調に何らかの変化が現れたときは、肝臓の病状はかなり進んでいると考えてよいと思います。

ことにアルコールの過剰摂取で傷めつけられた肝臓は、まず「アルコール性脂肪肝」になりやすいです。

「脂肪肝」は必ずしもアルコールだけではなく、メタボリック症状の人も、腹腔内の脂肪だけでなく、肝臓にも脂肪がたまります。

アルコールの飲みすぎによるカロリーも、脂肪として肝臓内に蓄積しやすいです。

この段階では誰も肝臓に脂肪がたまっている自覚症状は感ぜず、疲れも痛みもほとんど無いでしょう。

ただし肝臓にたまった脂肪は、血液中に溶け込み中性脂肪として細胞に運ばれ、肥満の要因にもなり、また高脂血症として血管にダメージを与えますので注意が涵養です。

この脂肪肝がやがて「アルコール性肝線維症」となりますと、疲れやすい倦怠感を感じるようになりますが、生活に支障はきたしません。

それがもし「アルコール性肝炎」にまで至りますと、肝細胞の壊死などが始まり、腹痛、発熱、黄疸、さらには多臓器不全や脳症にまで至ることもあり、入院治療を必要とします。

最も進んだアルコール性肝臓障害が「肝硬変」です。

肝硬変になりますと肝細胞が壊死し弾力を失い、肝臓機能の分解、栄養の貯蔵、胆汁の製造などが不全になるため、重篤な病状となります。

当然倦怠感はひどく、食欲不振と下痢、腹痛はもとより腹水がたまり、下肢に浮腫が出来ることもあります。

手のひらが紅くまだら模様になる、手掌紅班など、治療は長期化しますし、肝硬変はもっとも肝がんに移行する率が高いです。

さてさて、アルコールの飲みすぎでここまでになるには、個人差もありますが、酒に強い人でも1日150g以上のアルコールを毎日のように飲んでいることになります。

アルコール度数が16%の日本酒1合(180ml)で実質アルコール量は約28gですので、150gのアルコール量は5合(900ml)の日本酒を毎日飲んだことになります。

厚生労働省の指標計算式は、アルコール量(ml)Xアルコール濃度(度数÷100)Xアルコール比重(0.8)となっています。

6%アルコール度数の360mlの缶ビールは、360X0.06X0.8=17.3となります。

10gを1ドリンクとする単位で、17.3gの缶ビールは1.7ドリンクとなります。

日本酒2合(360ml)X0.16X0.8=43.2gで、4.3ドリンクとなります。

この計算式で1日平均6ドリンクを越えるアルコールを毎日飲んでいる人を、多量飲酒者と厚生労働省は称しているようです。

日本酒に直して約3合に当たり、缶ビールですと3缶半になりますかな。

酒飲みにとっては、それぽっちの酒では体は壊さない、俺の肝臓は大丈夫と思っている人は多いでしょう。

ただしこれが毎日となり、この限度を越える量が度重なりますと、強い肝臓もかなりの負担となります。

そこで休肝日の話を良く聞きます。1週間にせめて1日、理想的には2日か3日酒を飲まない日を作ることによって、肝臓をアルコールの毒性から解放する試みです。

私の友人にもそれを実行している人間が何人かいます。

一番実行しやすいのは、たまに早く帰った夕食に晩酌を止めるとか、日曜日を禁酒日にするとかで実行しているようです。

私は休肝日を取り決めていません。

飲みたいとき飲みます、飲みたいときが多いもので結果毎日飲んでいるようですが、自宅では夕食前に缶ビール1本か、焼酎80mlぐらいをお湯割りでグラス1パイ飲んでます。

1日あたり、1.7ドリンクぐらいが平均飲酒量ですが、仕事上の付き合い酒もかなりありますので、毎日にならしますと平均2.5ドリンクぐらいでしょう。

自分では標準型の酒飲みで、肝臓に余分の負担をかけていないと自負しています。

健康診断の数値も、アルコール性肝障害で数値が上がるγーGTPが30、その他GOTが26、GPTが28とここ何年かほとんど変わりません。

γーGTPが男性だ70を越え、GOTが40、GPTが45を越えたら、肝臓に負担をかけていると自覚することです。

そもそもアルコール性の肝障害は、一定期間飲んだアルコールの総量で影響が出ますので、休肝日を設けている人でも、深酒を多く繰り返していますと、そのダメージのほうが深刻です。

酒は百薬の長との喩えがあるように、肝臓の負担にならない適量のアルコールを、毎日習慣的に飲んでいるほうが、健康には良いようです。

さらに付け加えれば、酒の肴に脂肪分の少ない良質のタンパク質を食べることです。

タンパクアミノ酸は肝臓の機能回復には必須ですし、さらにビタミンが豊富に含まれる野菜類も忘れずにたべ、栄養が偏らないことも肝臓に優しい酒飲みです。

ところで、アルコールが原因で傷んだ肝臓は、断酒を断行しますと、その期間によって驚くほどの回復もします。

ただし肝硬変から肝臓にまで進んだ肝臓疾患はその限りではありません。

そこまでいかないうちに、アルコールの飲み方を注意しましょう。

さらに女性と老人は酒の分解力が青壮年の男性より弱いことを付け加えます