〜無限の能力の不思議さ〜
(昔の農業は腐植酸だけで生産)
先日ある機会があって、天然有機酸の「フミン酸、フルボ酸」を紹介する講演をいたしました。
日本、韓国はじめインドなどで実際行った実績を題材にし、また機能性のメカニズムを紹介しながら、この不思議な物質の持っている力を解説です。
その内容の一部を紹介いたします。
フミン酸とは英語でHumic acidと言いますが、一般的にはHumus(腐植土)の中に含まれる有機酸です。
腐植土とは山や森の落ち葉や枯れ枝などが腐食し、微生物で発酵し酵素触媒など化学的変化で、土に還元された有機質を沢山含んだ栄養豊富な土壌で、別名腐葉土とも言います。
ご存知のよう地球上の土は
(1)岩石が風化し、植物動物などの腐食物と交じり合い、水分を含んだ粘土化したもの
(2)水を含まず風化しない小さな粒子になった白色のもの
(3)風化はしたが酸化鉄など鉱物質を多く含んだ、含水量の少ない赤茶けた酸性土壌に大別して分けられます。
(1)の土は一名「黒色土、黒ぼく」と称する、保水性と通気性のよい土壌、黒色になった理由は動植物の腐植によるもので、泥炭なども含まれます
(2)は水分がなく、腐食分がまったくない「砂」
(3)は酸化鉄などが多く、また石灰岩や玄武岩が風化酸化した「赤色土」となります。
そのなかの「黒ぼく」土壌が農産物生産にもっとも適した土壌といわれ、その土壌は多くが河川を中心とした平野、デルタ地帯、その昔は森林が繁茂していた開墾地などに多く見られます。
この土壌が腐植土を沢山含んだ土壌で、その腐植土の中には窒素、リン、カリウムなどの基本的な植物の栄養素が含有され、植物の成長に重要な意味を持ち、何百、何千年の昔から、その養分だけで食料が生産されていました。
私が紹介するフミン酸、フルボ酸はこの腐植土の中に当然含まれ、この有機酸の存在が栄養の吸収を増進させたり、病気予防に働いたり、おいしく栄養価のある農産物を生産していました。
このように人間の生存と食糧と文化の発達は、河川を中心になされてきたのです。
人類の起源の四大文明も、すべて河川中心に起ってきた事実は、すべて腐植土と腐食酸を含んだ豊穣な土壌があったからです。
日本も江戸時代以前の農業は、現在使用されている化学肥料や農薬などはなく、それでも作物は生産されていた理由に、この腐食酸が充分土壌に含まれていたからと考えられます。
それは国土を覆う森林や自然林が国中に繁殖していたからで、フミン酸、フルボ酸を豊富に含んだ河川の水が、洪水であふれたたり、灌漑設備で田畑を潤したりして、黒ぼく地帯をより豊かな土壌にしていたのでしょう。
なぜフルボ酸とフミン酸が植物の成長と、病虫害の予防に良いかと申しますと、この物質そのものが機能性の高い電解質を持っているからです。
電解質とは物質細胞が体液や水に溶解し、電気を通す物質がイオン(電荷を持った粒子)で、動物や植物の細胞内に栄養を移行したり、また放出したりするときこの電解質が働きます。
あらゆる物質はこの電解質イオンを持っていて、陽イオン物質と陰イオン物質があります。
たとえば植物の栄養元素のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムはプラスイオン(陽電子)を持っていますが、塩化イオン、リン酸、炭酸水素はマイナスイオン(陰電子)です。
ところで植物の細胞に吸収される場合、電解質のバランスが必要で、ことに栄養補給と水分吸収にはこのイオンバランスが重要な意味を持ちます。
配合肥料はそれらのことを考慮して、バランスの取れた配合設計を考慮していますが、農地の条件や作物によって、また気候の変化やストレス、病気や害虫などの障害など発生しますと、必ずしもバランスが取れません。
フミン酸、フルボ酸の電解質物質としての働きが、イオンバランスの調整を行い、植物に健全な栄養素を吸収させたり、病虫害に強い体質に作り変える働きをします。
配合肥料などは化学的に栄養分を吸収しやすい状態に処理されていますが、発酵畜糞や堆肥など有機肥料の仲間は、このバランスが異なり、また分解されにくい状態のままです。
それゆえフミン酸、フルボ酸の効能が顕著に発揮されるのは、有機肥料の分解吸収でしょう。
さらに植物に絶対必要なミネラル類も、そのままでは植物に吸収されにくく養分となりません。
フミン酸はこれらのミネラルをキレート(挟み込んで)して、根っこから吸収しやすい形にすることができ、ことにフルボ酸は鉄分を吸収し、フルボ鉄として植物の成長と病気予防に役立ちます。
電解質物質としてのフミン酸、フルボ酸は、電解質能力だけでなく、気体吸収性、悪臭の分解、保水性、肥料分保持能力、光合成促進、水質浄化など、まだまだ無限の力がありますが、その続きは次号に譲ります。