フミン酸の力(4)

〜発酵鶏糞の悪臭対策での成功〜
(安価で手軽、人畜無害の消臭剤)

「悪臭公害で悩んでいます。」こんな訴えが、畜産農場近辺の住民から、市町村の窓口に絶えず届けられます。

卵や牛乳、鶏肉、豚肉、牛肉など、国民生活に大切な動物タンパク生産農場は、臭いとハエなどの害虫発生公害との戦いに、かなりの経費と時間を費やしていますが、根本的解決になかなか至りません。

そんな農場の悪臭解決に、フミン酸およびフルボ酸が使われ、住民とのトラブルが解消されたいくつかの例を紹介します。

「神奈川中央養鶏農業組合」は、文字通り神奈川県の中央にあたる愛甲郡愛川町三増にあります。

横浜近郊で養鶏場を営んでいた養鶏グループが、急速な発展で市街化が迫り、悪臭による畜産公害が問題化する横浜市から、閑静で人家もない、臭いで悩む心配のない愛甲郡の山の中、愛川町三増に移転したのは50年前の昭和37年ごろでした。

それから半世紀、いまは神奈川県を代表する養鶏集団で、合計80万羽からの採卵鶏を持つグループとして全国の同業者からの信頼も厚いものがあります。

「安全安心な卵作り」と「地産地消」を目標とし、将来性のある、地域貢献ができる、地域社会から愛される企業集団として、ことに公害対策には万全の注意を図ってきました。

ところが50年間の歴史は地域環境をがらりと様変わりさせました。

一望しただけでは人家がかすんで見えるような山野田園が、いつの間にかすっかり様相を変え、周囲に人家がたち始めたと気がついた時には、周り中が住宅地と化し、そばにはゴルフ場も開設されるようにもなりました。

こういう環境になりますと、養鶏場があることを承知で家を建てたというものの、そこに住まいはじめた町民には、養鶏場から臭う鶏糞をはじめ鶏そのものの臭いは気になりだします。

さらに採取した鶏糞を発酵し、肥料にする段階ででるアンモニアの臭いは、鶏舎に堆積している鶏糞の何倍かの臭気として、周囲に漂います。

こうなると地域住民は悪臭公害として、市町村の行政窓口に苦情を訴えます。

まして昭和46年(1971)6月法制化された「悪臭防止法」には、悪臭を出す企業へ市町村は改善命令を指示するくだりがあります。

愛川町の市民相談窓口を通じ,産業振興係りから神奈川中央養鶏に対して当然改善命令が出ます。

農場側は消臭効果があると宣伝されている、あらゆる物質を使用して対策を講じましたが、どれも宣伝ほど効果がなく解決しません。

そんな折、ある紹介者を通じ、私どもの天然フミン酸の消臭効果を試してみたいとの要求があり、早速に1棟の発酵槽で試験を始め、その結果、組合長の彦坂茂さんから「これは今までの消臭剤と本質的に違う、使用直後から潮が引くように臭いがなくなる。」と絶大の評価をいただきました。

使用方法は粉末フミン酸を水に浸し、そのうわ水を400−500倍に薄め、動力噴霧器で発酵槽に上から撒布する方法です。

ご承知のよう、私たち人間がくさいと感じる臭いは、気体として空気中に漂う臭い物質を、鼻腔の中の臭覚が感じる官能の感受性で、外気や室内の温度、湿度、風速などで違ってきますし、さらに嗅ぐ人間の感受性の相違によってさらに異なります。

いずれにしろ気体ですから、姿や色がありません、だが臭い物質は細かい固体として空気中に漂い、人の鼻腔や物体に取り付いて、臭いを発散させます。

空気中に浮遊する臭い物質をキャッチしするには、気体物質か液体の細かい粒子の水分子物質を空気中に撒布するのが的確です。

この養鶏農協が採った噴霧方法は的確だったことになり、水溶液に溶解したフルボ酸が臭い物質と空気中で接触し、臭いの分子を分解し、ただの原子に変えてしまう有機化学変化で臭気をなくしてしまいました。

これは天然のフミン酸フルボ酸が持つ独特の作用機序で、電解質有機酸のみが持つ特性です。

そもそも臭いを消す消臭剤の作用は、大別して四つの方法があります。

1)感覚的消臭  芳香剤など他の匂い物質でごまかし、悪臭をマスキングする方法。
欠点、大規模消臭が難しいのと、匂いによっては抵抗感を持つ人がいる。
強い悪臭では効果がなく、芳香剤と混合してしまう。

2)物理的消臭  臭い物質を吸着や包摂してなくす、活性炭など微細な穴に吸着。
欠点、小さい容積しかできない、時間経過で臭いが再発する。

3)生物的消臭  微生物や酵素などで臭い成分を発酵分解あるいは触媒分解する。
欠点、効果が出るまで時間がかかる、季節の温度変化などで効果が変動する、空気中に拡散してる臭い物質には難しい。

4)科学的消臭  化学的消臭成分による化学反応で中和、酸化などの方式。
欠点、複合している臭い成分に全て対応するには、一つの化学物質では無理。合成化学物質に対する抵抗感がある。

どれも一長一短があり、全ての条件を満たす消臭剤は難しいです。

さらにその上消臭作業は必要悪で、できたらそのようなことにコストをかけたくない企業体や団体、個人が多いため、価格的に安価でパーフェクトの効果を求めますのでますます難しくなります。

また消臭は科学的診断で90%の臭い物質がなくなっても、官能的には悪臭が60%以上残っている印象があり、悪臭がなくなったと感じさせるには科学的数値でゼロに近くならないと、認めてもらえない難しさもあります。

これらの諸条件を踏まえて「臭わなくなった」「臭いが少なくなった」「これくらいなら我慢できる」と周囲を納得させる消臭剤が必要です。

まして養鶏場や養豚場など畜産施設は膨大で、その中にいる動物が排泄する糞尿の量は並大抵のものではありません。

ちなみに豚1頭の一日の排泄する糞尿の量は、60−100キロ体重で約5.7キロ(糞1.9尿3.8)と人間の糞尿は1.4キロ(糞0.4 尿1.0)ですから4倍の多さです。

それが1万頭飼育規模ですと1日50トン越えます、最も糞の量はその3分の1でなおかつ水分が70%入ってます。

80万羽からの養鶏農協の糞量は1日50トン(含水分)を排泄処理することになります。

その糞には窒素と燐、脂肪など、条件によりすぐに臭い成分に変わる物質が、沢山含まれますのでたまりません。

こんな厄介な畜産糞尿の消臭剤はそうそうありません。

まして効果が確認され、そのうえ安くなければならないとなれば、なおさらです。

幸い私どもが提供した、カナダのロッキー山脈の天然フミン酸物質は、その難しい臭気を分解する能力が評価されたのは、発酵槽から蒸発する代表的刺激臭のアンモニア臭が、極端に少なくなったからです。

この天然フミン酸にはフルボ酸とウーミック酸という水に溶けやすい物質が沢山入っています。

この物質は陽イオンを多く持った電解質物質で、なお窒素を分解吸着する力があり、水分子と一緒ですと働きが活性します。

分かりやすく言いますと、アンモニアはNH3と、一個の窒素と三個の水素が結びついた化学物質です。

この化学物質をばらばらに分解し、窒素と水素を切り離してアンモニア分子ではない状態になり、アンモニア刺激臭いがなくなったのです。

同じように硫化水素、メチルメルカブタン、プロピオン酸、など22個ある悪臭物質の化学構造を分解することで臭気を減少させる働きが期待されます。

ところで、畜産の悪臭公害では南九州はひどいです。

ことに鹿児島、宮崎は日本を代表する畜産県だけに、地域行政府もその対策に頭を悩まします。

大隈半島のある市の発酵センターは、発酵施設工場内のアンモニア係数が、1000ppmを超えるものすごい数値がありましたが、私たちのフミン酸投与で200−300ppmに急激に下がり、それまで使用していた微生物製剤や化学物質から、この天然有機酸に変わることになりました。

また宮崎県のある市では、養豚の消臭剤としてフミン酸を飼料に混合、排出する糞の臭いそのものをなくす試みを実行しています。

それに市として補助金を出してまで奨励している背景は、各地に散在している養豚家と、その周辺の住民の臭いトラブルを少しでも解消する狙いがあります。

もっともこの試みは消臭目的ですが、フミン酸はそもそもフミン飼料として農水省から認可されているだけに、発育向上から飼料の効率化、肉の品質、さらには健康的な育成率の向上まで、計り知れない優位点がありますので、その面の評価が高くなるかもしれません。

フルボ酸の消臭効果は何も畜産に限ったことではありません。

これだけ厳しい畜産の臭気公害を解決するのですから、一般家庭の臭い退治にはもってこいです。

その特徴は、液体フルボ酸そのものを100倍ぐらいに希釈し、スプレー撒布します。

フルボ酸は黄色い無臭な液体で人畜無害の物質で、逆に肌に水滴がかかっても肌の健康に役立ちます。

筑波大学ではアトピー性皮膚炎の治療効果で特許を取得しているくらいですから、肌はつるつるになるし、筋肉の疲の解消にもなります。

ペットを飼われている方々の糞尿の臭いも、消臭剤としては効果がありますし、ペットの健康効果とあいまってもしその目的で開発されたら、爆発的人気となるでしょう。

まだ家庭用商品は市販されていませんが、私自身はトイレや生ごみの消臭、下駄箱、押入れなどの臭い消しに重宝しています。

後日談ですが、神奈川中央養鶏の彦坂組合長からは「フミン酸を使うようになってからの発酵鶏糞の人気が上がりました。使った農作物の成績が、一段と違いが出るそうです。」フミン酸の肥料としての効果も、発酵鶏糞と相乗して働いたのでしょう。