〜友人達におこった一過性脳虚血症〜
(加齢から来る動脈の硬さともろさと血栓)
昨年の11月終りと12月はじめ、私の同年代のゴルフ仲間二人が、
同じような症状の「脳梗塞」の発症で緊急入院しました。
多くの方はご存知と思いますが、脳梗塞とは脳細胞に張りめぐって
いるどこかの血管が、血栓などにより詰まり、血流が停止し、血液が
届かない脳細胞が壊死し、機能不全となり、最悪はその原因で致死に
至るか、もし一命を取り留めても重大な後遺症が残り、運動機能や
言語機能に障害が起る恐ろしい病気です。
発祥の原因はさまざまですが、高血圧、高いコレステロールなど
ですが、多くは加齢による血管の傷みや硬化、さらに血管内に
たまった脂質と血栓(プラーク)が原因となります。
ことに硬い塊となった血栓が動脈を詰まらせ、脳障害による独特な
症状を呈しますので、脳梗塞の発症はそれとなく素人にも分かる
ような病気です。
私の母親を含め私の一族には、脳溢血、脳梗塞の発症者が多く
いますので、血統的に脳疾患病に対し注意しなければと、血圧、
コレステロール、動脈硬化予防には関心が強いです。
それと言うのも、卒中、中気、などの症状を子供の頃から見ていて、
怖くいやな病気とのイメージが今でも残っているからです。
それゆえに、なぜ血栓ができるか、脳梗塞発症の前兆はあるのか、
発症したらどう対処するか、また発症しない方法はどうするか、
これらのことに気を使います、今回はそんなことを意識しながら、
具体例を混ぜながら考えてみましょう。
今回発症した一人、81歳のIさんは、年齢的には立派な後期高齢者、
血管年齢もそれだけ歳をとっているので、血栓発生もがあっても
不思議ではなく、発症した直後その知らせを聞いて、やはり彼も
歳だなと妙に納得しました。
私とは古い友人でかれこれ60年以上、現在は仕事の付き合いもあり、
2〜3年前までは毎週の土曜日、ゴルフを一緒に堪能した好敵手です。
たまたま11月下旬、私の会社が参加出展した農業関係の展示会に彼は
出かけようとし、自家用車の運転席に乗った時発症したようです。
しかしその瞬間、彼自身は体の変調を意識せず、車の発進をしようと
しましたが、その様子のあまりの異常さを見抜いた彼の奥さんが、
慌てて運転を止めさせ、大事故にいたらなっか幸運を得ました。
一般的に脳梗塞という病気のイメージは、脳血管障害の症状として卒倒、
運動機能停止、言語障害、意識障害と連想しますが、彼の場合意識も
運動適応力もあり、まして本質的な身体機能には異常がなかったようです。
もっともこの話は、見舞いに行った私に、病院のベットのなかで本人が
語ったことで、実際は体はふらふら、発進した車は蛇行し、あちこちに
ぶっつけて、傷だらけにし、話している言葉もろれつが回らない状態で、
それでいながら本人は「体は悪くない、どうしても出かけると」むちゃ
くちゃな意地を張るため、それを思いとどめるのに言い争い、まるで喧嘩
でしたと、それはそれは大変だった話を、奥さんからすでに聞かされて
いましたから、病気になった本人は気楽なもんだと苦笑しました。
当の本人は、奥さんとのやり取りのいきさつをすっかり忘れているようで、
やはり脳梗塞の典型的な意識と認知の障害が出ていて、その間の記憶が
飛んでしまって、言い争ったことなど忘れています。
無理やり近くの医院で診断、すぐに設備の完備している大病院に入院、
大事に至りませんでした。
手当てが早かったので、非常に恵まれたケースです。
医者の診断は「一過性脳虚血症(TIA)」と言うことでしたが、入院時
には梗塞を起こした血管に血栓がなくなり、正常になりつつあったようで、
本人の意識も奥さんと言い争ったことなどケロッと忘れ、おとなしく入院し、
脳梗塞発症の老人患者となったようです。
MRI検査の結果でも梗塞を起こした血栓の存在が認められず、後遺症も
皆無でしたが、なぜ突然に一過性にしろ脳虚血症が起きたか、医者に質問
したところ、彼には本来心臓に不整脈があり、おそらく心房細動による
心臓からの血栓が、脳血管を詰まらせたのだろう、との意見を聞かされた
ようです。
というのも、一過性の梗塞といっても、それは重大な脳梗塞の発症前兆かも
知れず、その後の適切な治療処置と、入院による経過観察の必要があり、
約20日間ほど病院に滞在、退院後暮れの12月26日に私の家に退院の
挨拶に来まして、入院前よりも元気な顔を見ることができました。
もう一人の友人A君は、高校時代の同級生、横浜で開業している内科の
医者で、私たちが定例で行う同級生ゴルフコンペの常連でした。
医者は時間と金があるのか、ゴルフの経歴も実力も高く、ハンデもそれなり
でしたが、昨年10月に同じ組で回り、彼のゴルフにいつもの冴えがなく、
不安定なスイングとミスショット、パットも入らず、どうしたのか体調が
悪いか懸念したほどでした。
結果私が優勝、スコアが悪い彼がブービーで、彼と私が次回幹事になる
予定でしたが、他の友人から暮れに「A君が脳梗塞で倒れたので代わりに
私が幹事を君と一緒にやる」とのメールが入り驚きましたが、その兆候が
秋のゴルフのプレーに、現れていたのではないかと気がつきました。
正月になり彼からの年賀状が到着し「脳梗塞であの世行きの一歩手前まで
行きましたが、処置が早かったので助かりました、後遺症もなく元気ですが、
ゴルフはしばらく休ませてください」とありました。
新幹事の友人のメールには「彼は医者、息子も医者なので、症状が出たとき
すぐに手を尽くし応急処置をしたので、大事にならなかった」との情報が
送られてきました。
詳しくは分かりませんが、彼も「一過性脳虚血症」だったかもしれません。
もしかすると本格的な脳梗塞だったが、血栓溶解剤の早期投与あるいは血栓
除去手術など、周囲に卓越した医師たちがいて対応出来た恵まれた環境が、
年賀状の文面になったのでしょう。
また何時の日か、元気になった彼とゴルフを楽しみ機会があったら、詳しく
あの世からの生還状況を聞いてみたいです。
さて、IさんもA君も私と同世代の81歳と80歳、決して若くはありません。
ことに加齢による肉体の機能と細胞は、かなりの疲れと傷みが生じてきて
います。
ことに血管はその代表で、老化は血管から始まると言えるくらい、年中無休の
働きを続けていただけに、もろくもなっています。
だから、何かきっかけがあると、血液を循環させる心臓や血管に必要以上の
負担がかかり、肉体的に生命にかかわる問題を起こします。
今回の脳梗塞発症も、これから本格的な冬を迎えようとした時期に、発作が
起きたのは偶然ではなく、朝晩の冷え込みと日中の温かさの温度差を調節を
するため、心臓と血管に若干の負担が掛かったことが原因の一つでしょう。
なお困ることは、これら循環器に傷みや疲れが生じても、痛くも痒くもなく
日常生活に支障もきたしません。
ことに血管がもろくなる原因の一つ動脈硬化などはその代表で、サイレント
キラー(静かな殺し屋)と呼ばれ、無症状です。
もし不幸にして動脈硬化原因の病気発生となると、心筋梗塞、脳梗塞、
脳出血、動脈瘤破裂など血液循環に支障をきたす重大な疾患のケースが
多く、発症後のすばやい治療処置がないと、生命の危険が最も多い病気
です。
そのなかで、血管が詰まるか細くなるかして、血液の流れが止まるか、
流れが少なくなり脳細胞に、酸素や栄養が行き届かなくなったが病気が、
脳梗塞と脳血栓症、脳塞栓症、一過性の虚血症などと呼ばれる疾患です。
その原因はいろいろありますが、最も気をつけることは生活習慣から来る
症状の「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」「肥満」などで、「死の四重奏」
と比喩される危険因子です。
それらの症状をさらに悪化させるのは、生活習慣と環境で「喫煙」「過食」
「飲みすぎ」「アンバランス食事」「運動不足」「ストレス」「睡眠不足」
「不規則な生活」などがあり、そのほか「遺伝体質」「性格」「感染症」
「住居環境」などが関連し、さらに「加齢」が加わりますと、危険因子は
広がります。
この中で、加齢と体質は変えることができませんが、生活習慣病と
いわれる死の四重奏は努力次第で解決できます。
それだけに「転ばぬ先の杖」ではありませんが、日ごろの生活習慣に
もっと関心を払い、老後の寝たきりを防ぐ手立てを考えましょう。
さて次回は、脳梗塞の原因と予防治療について、私の友人たちのケースも
題材にして探っていきたいと思います。