〜発展途上の国インドは農業大国〜
(日本と日本人に寄せる、親愛の情)
「昨年の災害から約1年たちますね、復興状態はいかがですか?」
インド南部の都市バンガロール郊外の、閑静な高級住宅地に新築された
私どもの取引先の経営者のシド サリール(Syed Saleel)さんの豪邸に
招待され、その両親、兄弟、子供たちから大歓迎されたときに、誰言う
ともなく東日本大震災の被害と、その後の様子について心配しての
言葉を多く聞かされました。
「ご心配ありがとうございます。残念ながら復興はいまだ完全ではあり
ません。地震と津波で家を失った人たちは、仮設住宅住まいか、ほかの
土地で生活しています」
インド人の全てではないでしょうが、日本の3.11の被害の大きさを
心配し、また日本人に対する親近感が高いので、その言葉も真心がこもり
ます。
それゆえに、日本の震災に対する哀悼の意味も、社交辞令的なものでは
なく、心から発したもので、私たち日本人としてはその心遣いに感謝の
気持ちで答えるしかありません。
昨年9月、バンガロール市内のホテルで開いた、私どもの商品の説明会と、
インドO.L社との間で取り交わされた契約の発表会の席上でも、招待
された各界の代表者や、大学の教授陣、代理店の社長、新聞記者たち
全てが、日本の大災害とそのとき犠牲になった人々へ、思いをはせて
全員で1分間の黙祷をささげていただいたのを思い出します。
「日本の経済はどうですか?、災害での影響は?」
O.L社の社長のアンザール(Anzar)氏が聞きます。
彼はまだ40歳を少し越えた精力的に活動する青年実業家で、招待して
いただいた40代後半のサリールさんとはいとこの関係、両親同士が
兄弟と姉妹といいますから、いとこと言うより兄弟みたいなものです。
「災害の影響はあります。ことに原子力発電所の崩壊による放射能の
被害は深刻です」
「そうですね、私たちも報道で知っています、核は問題を起こした
ときが怖いですね」
「インドの原子力発電はどうなっていますか」
「一番は火力、石炭とオイル、水力、原子力はまだ数パーセントです」
との答えですが、インド政府はこれからの電力供給を、原子力に頼る
計画があり、聞くところによりますと20基ほど設置する予定のよう
です。
しかし彼らは、その経緯には触れず、火力発電が主力といいます。
インドの暑い陽射しと降雨量の少なさ、国土の広さと遊休地の多さから、
太陽光発電など格好の自然エネルギー供給国になれると思いますので、
問いだ出しますと。
「太陽光は分からないが、風力発電の計画はあります」との答えも
ありました。
インド経済の発展には電力の供給は欠かせない条件だけに、私たちも
関心のあるところです。
そんな会話が夕食会をはさんで続きます。
インドと言うとカレーの国とのイメージがありますが、家庭料理の
夕食会での品々には、カレーのようなスパイシーな料理は一つで、
小麦粉のクレープに似たチャバティーにつけて食べる味は、その家の
独特なスパイス配合が妙味なのでしょう、また違った風味を感じます。
蒸し焼きのタンドリーチキン、スパイスの効いたサラダ、魚のすり身の
フライ、香辛料の効いたフライドライス、ヤギ肉を使ったスパイシーな
スープ、炒めた野菜などなど、大きなテーブルいっぱいに並べられた
インド料理に感激しながら、異国の味覚を堪能しました。
サリーヌさん一家の心温まる歓迎に感謝です。
この会社はそもそもインドハーブと植物性機能食品の原料開発製造販売が
主力で、当然日本も大きな顧客の一つです。
どうも言葉を濁した内緒話ですが、日本の大手健康食品会社の機能性植物
製品のいくつかは当社製のようです。
もっとも製品の確かさと、有効成分の多さ、無農薬など間違いのない原料
であることが重要です。
私どもはこの中の無農薬ハーブ生産に寄与しています。
というのも有機農産物に最も効果的な、天然のフミン酸と液体のフルボ酸を
この会社に紹介し、無農薬はもとより無化学肥料のハーブ生産にお手伝い
している関係です。
この天然のフミン、フルボの電解質有機酸は、インドの赤茶けた大地に
非常にマッチし、完全無農薬と減肥料で、収穫量が格段に上昇したので
喜ばれました。
日本の国土の8倍の広さがあり、耕地面積はそれを上回り世界一ですし、
主要穀物の米、麦、野菜果樹は世界2位、大豆、菜種などの植物油原料
作物も世界2位の生産量です。
大豆を含め豆類総合では世界1ともなります。
しかし残念なことに、これら作物生産に農薬と化学肥料はつき物で、
そこにインド産農作物の輸入を躊躇する国々が多くなる理由があり
ます。
もし天然フミン物質がこれら作物から農薬を減らすことができたら、
インド農業にとって福音です。
私どももインドの発展に寄与できたらすばらしいとも思いすし、
その成果がインド国民の生活向上にまで波及すればもっと感激です。
さて今回バンガロールに訪問の私たちの目的は、当地で開催された
畜産の展示会への出展によるものです。
市内を外れた展示場は、インドの畜産業者、関係者はもとより、
近隣の国々からの来場で賑わいましたが、アメリカ、ヨーロッパ、
あるいはタイのバンコクなどで開催される展示会と比較して、
来場者の数は少なく畜産関係者の関心が低いのかと感じました。
しかしながら統計的には牛の飼育頭数は世界一ですし、牛乳の
消費量も世界一です。
食料用のヤギ、ヒツジの数も多く、最近は鶏肉生産も急速に増加して
おり、私どものブースへお見えになった、バンガロール近くの
ブロイラーインテグレーター(食鳥統合生産会社)の一つは、年間
約5億羽の生産をしていました。
もっともインド一番の生産量ですが、日本全体で年間6.5億羽の
生産量に近い数量を、一社で生産してることになり、その他の生産
会社全部の数量を換算したら、おそらく20〜30億羽を越えるで
しょう。
宗教上養豚産業はほとんどないのではないかと思われましたが、
国全体で年間1700万頭の生産があると聞かされて驚きました。
全国レベルで見ますと、少ない畜産動物の数ではありませんが、
入場者の数は3日間で8000人と主催者の発表は、決して多くは
ありません。
もっとも面積の広いインドのこと、南部の都市バンガロールでの開催
には、距離的に参加できない関係者も多いでしょうし、牛が多いと
いっても、広い意味で農家で飼育されている水牛なども含まれます
ので、産業としての企業組織的発展度は、日本とは違うかもしれません。
ただし世界2位の人口を持ち、年率8%の成長を続けるインドですし、
自給飼料も豊富な現在、畜産生産物の優位性は日本の比ではありません。
将来的に畜産、養鶏の生産は飛躍的の伸びるでしょう。
私どものパートナーO.L社も、新しく畜産部門を立ち上げ、私たち
日本からの技術と製品を、インド市場に積極的に紹介する予定です。
やがて、ブロイラー肉、鶏卵、豚肉の輸出国になることも考えられ、
ことに鶏肉は近くの中東諸国は需要の多い消費地で、インドの地理的
優位さは魅力です。
展示会二日目に会場を視察したバンガロール市長とも握手し、日本
から唯一の出展者であるわが社の存在を認識してもらい、インドの
畜産発展に尽力している姿を見てもらいました。
このバンガロールと言う市は、500万を超えるインド第三の人口を
持つ大都市ですが、市内の道路など交通網は不備で、建設中の高速道路、
あるいは地下鉄の工事もなかなか進捗しない状態で、工事現場から
出る埃で街中塵埃の中に埋まる感じです。
これらの交通網の建設には日本のODA(Offical Development
Assistance 政府開発援助)の資金援助と借款がなされ、バンガロールの
地下鉄建設にも複数年にわたり650億円以上の日本からの援助が
なされているはずです。
ただそれだけではなく、電力供給配電システム、上下水道整備などは
すでに400億近い額が貸し付けられていますし、インド全体では
円借款で3兆円を越え、無償援助、技術援助などで数百億円と、
インドへ対する日本政府の思い入れは強いです。
だだし多くのインド人はそんな事実は知りませんし、まして日本人は
さらに関心がなく知らないでしょう。
しかし日本の国際援助は世界の発展途上国には、大いに役立っているの
ですが、現地国民にアピールする方法が下手なため、目立ちません。
ODAの資金も我々の税金、もっと使った成果を強調してもらっても
いいでしょうし、そんな地道な活動が、世界の国々との友好の架け橋
にもなります。
民間の私たちの小さな国際交流より、大きな金が動く国際借款に
対する日本国の力量のほうが目立つはずです。
しかし本当の心のこもった国民との交流と親善は、私たちのような
仕事を通じてでも、小さいながら親密さが出るかもしれません。
5泊6日のインドでの仕事を終え、真夜中12時発のタイ航空で
バンコクに向かいました。
次回はタイについて。