〜運動障害ギラン・バレーの原因はカンピロバクター食中毒〜
(鶏肉は加熱処理で食べましょう、60%が汚染の実態)
1. 大原麗子さんを苦しめた難病
いまから5年前2009年8月、美人女優の大原麗子さんが亡くなられました。
日本的な美人で人気があり、ウイスキーのCMで「少し愛して 長〜く愛して」とささやく言葉は、そこはかとした色気があり魅力的でした。
訃報を知った時、ファンの一人として残念でした。
大原麗子さんを30歳前から苦しめていた病気が、ギラン・バレー症候群という難病で、おそらくその症状の高進で亡くなられたとの診断です。
ギラン・バレー症候群とは、末梢神経疾患による運動障害で、手先や足先が急に動かなくなり、口もきけず目も動かなく、最後は呼吸困難となっていく怖い病気で、重症になると致死率が高いようです。
原因はいろいろあり、はじめは咳、発熱、咽頭痛、頭痛、下痢など風邪の症状そっくりですが、やがて下肢の筋肉の動きが悪く発症がはっきりしてくるようです。
治療も長くかかり、他の病気との合併症なども絡むと生命の危険度は高まるようです。
指定難病の一つで、怖い病気です。
発症の引き金になる要因はいくつかありますが、最も多い原因は「カンピロバクター食中毒」発症の後遺症のようです。
インフルエンザワクチンの接種、マイコプラズマ感染(風邪症状)なども原因要素になるようですが、カンピロバクター食中毒後遺症が20〜30%とダントツです。
どうしてカンピロバクター中毒というような、有害微生物繁殖の腸炎と、運動神経に起こる障害が、どこで繋がっているのか疑問の方も多いと思います。
ご存知と思いますが、私たちの体は生命維持を図るため、体に危害物質が侵入しますと、それを防ごうとする防御反応が働きます。
その反応を免疫抗体反応とも言います。
その作用はいろいろあり、危害物質も様々ですので、それに対応するさまざまな免疫抗体が自然に生産され、病気の進行を食い止めようとする働きが本能的に起こります。
ところがこの危害物質を攻撃する抗体が、時として誤認し危害物質と似ているような、正常な細胞や機能を攻撃してしまうことがあります。
たまたまカンピロバクター菌の危害物質細胞が、正常な末梢運動神経細胞と相似していて、カンピロバクターを攻撃する予定が、間違って運動神経の機能を破壊させてしまい、下痢や発熱の中毒症状が収まったあと、数日または数週間後に突然、運動機能に障害が現れるようです。
これはよく言われる自己免疫機能疾患で、膠原病の間接リュウマチ、全身エリトマトーデスなどや、よく発症しやすいアレルギーやアトピー症候群も自己免疫疾患の範疇に入ります。
自己免疫疾患はよく言えば免疫抗体の反応が敏感で、まじめに働き、本来攻撃する危害細胞とよく似た正常細胞までも攻撃してしまう厄介な疾患です。
潜在的に原因はいろいろあるようですが、ギラン・バレー症候群はカンピロバクター中毒後遺症が一番発症率が高いとされています。
ところでカンピロバクター菌の感染は、鶏が生産する卵と鶏肉に多いとなれば、養鶏場はその対策に万全を期さねばなりません。
そのことは後で触れますが、まずカンピロバクター菌食中毒を、一般家庭や食堂、給食センターや弁当屋などで、どのように防ぐかが問題になります。
2. 家庭で食中毒菌を防ぐ方法
さてさて、また暑い夏が来て食中毒発症が増える季節となりました。
有害な中毒菌が喜んで繁殖する、温度と湿度の季節です。
その中にはカンピロバクター菌だけでなく、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、クロストリジューム菌、病原性大腸菌、リストリア菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ菌など、私たちを攻撃する菌はうじゃうじゃいます。
この菌はほとんどが動物や魚の体内で繁殖しますが、動物や魚には被害が目立たず、感染した人間のみ多大な被害を出します。
その菌の感染をまず防がなくてはいけません。
厚労省などが発表している食中毒対策は「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌をやっつける」の3原則を示しています。
「菌をつけない」と行っても、養鶏場まで行って管理するわけでなく、購買した鶏肉などに触れた手やまな板や調理器具を、よく洗浄してほかの食品や食器などに菌をばらまかないことです。
「菌を増やさない」は購買した食肉などはすぐに冷蔵庫にしまい、菌の繁殖を防ぐことです。
夏場の30℃近い室温でそのまま放置しますと、2−3時間で数倍の菌数まで繁殖します。
さらに買い物の際には最後に肉、魚を買い、持ち帰ったら早めに加熱調理することです。
「菌をやっつける」はやはり加熱処理です。
カンピロバクターは75℃以上でで3分間加熱しますと、おそらく死滅します。
それが60℃ですと10−20%ぐらいは生きています。
ちなみに焼き鳥などは65℃以上で7分間焼きますと、芯まで加熱され菌は死滅します。
バーベキューも冷凍のモモ肉などは、表面がこんがり焼けていても芯は生のままの場合が危険です。
生の牛のレバー刺身もおいしいですが、カンピロバクターの感染の危険があり、また大腸菌O-157の危険もいっぱいです。
何れにしろ最後に加熱処理することにより、鶏肉のカンピロバクターは死滅しますが、中毒患者が多く発症している現実は、過熱前にほかの食品を汚染し、それを知らずに食べたからでしょう。
実際、厚労省発表の患者数より、潜在的にこの菌による腹痛、下痢、嘔吐は多いと思われます。
ある科学者の推定発表では年間350万人がカンピロに感染し、サルモネラ感染中毒でも72万人という数字があります。
ただ怖いことは、350万人のカンピロバクター中毒患者の後遺症として、ギラン・バレー症候群の発生の危険性が潜在することです。
3. 養鶏場でのカンピロバクター防御の方策
さて最後に養鶏場でどのようにして、カンピロバクター感染を防ぐかです。
これも厚労省の発表ですが、現在日本の鶏肉の65%以上がこの菌に汚染されているようです。
それは何を意味するかと申しますと、養鶏場の段階でいろいろな対策を講じても、この菌の感染を防止できないということです。
以前は抗生物質投与での感染対策をとった過去がありますが、その結果ペニシリン系、OTC系、CTC系その他抗生剤に対し、カンピロバクター菌は耐性ができてしまって、今では効果が弱くなりました。
またこれらの抗生剤が鶏肉に残留しますと、その肉を食べた人間に薬剤耐性ができ、重篤の病気発症ですべての抗生物質が効果が出ない結果となります。
そのため養鶏場では、治療用抗生物質はほとんど使用していません。
この現象は日本一国の問題でなく、全世界共通の問題です。
ただ先進国では医療管理が徹底しているので、カンピロバクター感染症の発症と死亡実態が報告されますが、衛生思想が行き届いてない国では、この被害実態の報告は少ないです。
昨年もメルマガ誌上で、カンピロバクター菌を取り上げ、養鶏場での感染をどう防ぐかの問題を提起しましたが、目下この問題はなんら解決していません。
鶏と言えば、もう一つ食中毒の双璧サルモネラ菌による中毒も問題ですが、幸いなことに鶏卵鶏肉の汚染度は、10年前と比較すると、かなり減少し現在はカンピロバクターの方がかなり上回ります。
困ることはこの菌に感染し、腸管で繁殖していても、鶏には病状が出ません。
それだから養鶏場主も感染の事実を知らず出荷、食鶏処理場でも当然分かりません、そのまま若鶏の肉としてスーパーの店頭に並びますので危険です。
カンピロバクター感染の事実は、鶏肉を生産する組織のインテグレーター企業の上層部や、病理検定をする獣医師などは、充分理解しその対策に努力もしていますが解決しきれないのです。
どうしようもないという心境で、悪く言いますと見て見ぬふりになっているかもしれません。
一般的な農場の衛生対策を充実し、消毒から作業員の教育まで、かなり神経を使っていますが、感染の解決になっていないのが現実です。
日本の鶏肉は骨抜きするため大型に育てます。
飼育日齢も諸外国に比べると2週間ぐらい長いので、カンピロバクターやサルモネラなどの感染の危険性も増加します。
ましてカンピロバクターは生育の後半、ことに出荷前に感染が広がります。
日本では出荷前1週間は飼料添加が許可されている薬剤も一切使用してはいけない薬事法規制があり無薬で育てます。
それもあってカンピロバクターもサルモネラも病原性大腸菌も、繁殖しやすくなります。
それで鶏肉のカンピロバクター汚染度の比率が高くなるようです。
そこで私たちは、この感染を少しでも少なくするよう、腸管のなかで悪い菌カンピロバクターやサルモネラと闘う善玉菌生菌剤を開発して、鶏卵、鶏肉生産農場に紹介しようとしています。
これは薬ではありません、わかりやすく言いますと、乳酸菌納豆菌の仲間で、人間の腸の健康にも効果があるものです。
この善玉菌が悪玉菌を退治する作用は長くなるので省略しますが、腸管を丈夫で健康にすれば成績も向上し、きれいな鶏肉鶏卵が生産されます。
コストが少しかかるかもしれません。
しかしそれを承知でカンピロバクター撲滅を考える農場を応援したいと思う今日です。
これは長い闘いになるでしょうし、完全無菌は難しいかもしれませんが、何事も挑戦することが大事で、それが今後TPPはじめ貿易自由化に対抗できる、安全な日本産の鶏肉あるいは豚肉、牛肉と生産となり、消費者に安心を与えることです。
いずれにしろ、まず鶏肉からギラン・バレー症候群を出さないことが、最終目的です。