〜80歳で20本、自分の歯を残そう〜
(全ての健康増進は歯の健全から始まる)
「80、20運動(ハチマルニイマル)という言葉を知っているか」
先日、同年代の仲間4人で夕食を食べていたとき、友人の一人が突然こんな
質問を投げかけました。
「80歳で20本の歯を残すことだろう」
私が答えます。
というのも、今月になって通院している歯科医と話したテーマで、80歳に
なっても20本の自分の歯が残っているようにしたいが、
達成することの難しさが話題になったのです。
何故歯医者に通うかは、歯が悪いからです。
数年前に治療した上顎と下顎の部分入れ歯(義歯)の金属部が折れ、
また時間変化で退化してしまい、咬み合わせがうまくいかず歯茎が痛み治療に
通わざるを得なくなったからです。
間もなく矯正治療も終わり、新しい入れ歯が出来ようとしている最中です。
歯医者との会話の中で「あなたは80歳すぎても自分の歯が沢山残って
いる方ですよ」と、80歳20本の歯が残っている状態に近いことを
褒められたばかりでした。
ところで私自身は、歯が立派と思っていません。
子供のころから虫歯の痛さに悩み、青壮年になってからも、歯医者通いが
日課のような時期があったことを記録しているから、そもそも歯は悪いものと認識しています。
さらに65歳の時、腹部の手術で45日間入院、1週間以上点滴ですごし、
その後傷んでいた奥歯が数本一遍に抜けた経験もあり、歯は不健康状態で
悪いとの思い込みが私を支配していただけに、医者の褒め言葉に違和感を覚えました。
「確かに80歳の時は20本あったが、その後2本抜けたので現在18本のはずだが」
「80歳で20本残すことが、歯の健康の目標ですからあなたは良い方です。
日本人の平均は80歳になると10本以下ですよ」
「ここへ来る患者さんも同じ傾向ですか」
「そうですよ、80歳前なのに総入れ歯の人もいます」
そんな会話の後、ハチマルニイマル(8020)という言葉が気になり調べますと、
厚労省のホームページにも8020運動の趣旨と、歯の健康は肉体の健康となり、
さらに腦の活性化につながるとし、歯の大切さと抜歯しないような生活習慣の衛生観念を案内しています。
この運動は平成元年(1989)から始まったもので、生活の質を高める
QOL(Qualtiy of life)運動の一環で、厚生省と歯科医師会双方の提唱で発足したようです。
この運動以前の実態は80歳で平均8本、60歳でも17.8本という数字でした、
そこでこの運動により60歳で24本以上、80歳で20本を達成する目標としました。
この運動は、幼児、児童など幼稚園、小学校時代からの教育と、歯を大事に
する習慣をつけさせ、さらに医療検診などから始め、歯科医、一般の医師、
薬剤師、保険医、街中の薬局、歯ブラシ、歯磨きペーストなどのメーカー
など、機会あるごとに大衆運動として、歯の衛生と健全化を謳ったキャンペ—ンでした。
その結果75歳以上の統計ですが、20本以上健全な人の割合が1998年に
10%だったものが、2011年には37%まで改善されたようです。
ただし歯の欠落は年齢とともに急激に進むもので、85歳以上ですと60%
近い人が総入れ歯になっているようです。
50歳を超えると、平均2年か3年に1本の割合で歯が失われているようですが、
75歳からの歯の劣化がことに著しいと言えます。
私自身がその年齢以前に下顎の奥歯を失い、左右にまたがる部分入れ歯となりました。
その後70歳後半に上の前歯が突然に折れて、それをカバーするために、
上顎にもブリッジの部分入れ歯が入るようになり、その都度歯科医通いが
増えるのも仕方ない時を過ごしています。
「歯医者と眼医者と仲良くなりましたよ。
勿論主治医の内科医は月に一度は訪問してます」
年齢を重ねるごとに、医者通いが多くなるのは、長い人生を歩いてきた証左ともいえます。
ご承知のよう、歯は一度失うと二度と戻らない体の一部ですが、
幸いなことに人工的な義歯で代用できます。
ただ、人工的な偽物の歯はやはり自然体ではなく、違和感があり、
また食事の内容にも変化が出ます。
私は総入れ歯ではなく部分入れ歯です。
残っている歯を土台にし、金属と硬質プラスチックで喪失した歯型を作り、
橋渡しにはめ込んだ部分入れ歯と言われるもので、上下の歯に装填しています。
これがなかなかしっくりいかず違和感があり、慣れるまで少し時間がかかります。
当然硬い食べ物は苦手で、柔らかな食べ物に偏り、豆腐はいいが硬いせんべいは苦手です。
咀嚼がうまくいかないと味覚も変化し、唾液の量も減り、言語の発音も発語にも若干影響します。
ことに口の中は敏感で、少しの異物でも咀嚼時に違和を感じ、
嚥下しないような対応しますが、それも鈍感になる危険もあります。
そんな理由で歯は、健全な肉体を維持する第一条件となるのです。
歯が失われる原因の多くが「歯周病」で80%以上のようです。
またカルシウムが溶解される虫歯菌のミュータンス菌によるものです。
ことに青壮年から歯周病菌は、歯の根元の歯茎の中に住み着き歯垢を作り繁殖し、
歯を定着する根元の歯肉を腐らせ、痛みから出血さらに口臭の原因ともなります。
この歯垢(歯石を含み)の中には、歯周病菌が1ミリグラム中10億からの菌数が生息し、
たちまち歯の土台と歯のエナメル質象牙質を分解溶解します。
生活習慣と密接な関係があり、飲酒、喫煙、暴食肥満、甘味過多、偏食など
様々な習慣と、歯の手入れが悪いと歯周病は発生しやすくなるようです。
対策は口腔衛生で、歯磨きの励行です。
各食事ごとと就寝前、一本一本丁寧にフッ素化合物入りの歯磨き剤での
ブッラシングが効果的なようです。
フッ素は元素の中でも活発な物質で、オゾン層破壊で禁止になった冷蔵庫の
冷気触媒フロンガスもフッ素ですが、有機化合物には厨房器具のテフロン
加工のフライパンなどもあります。
練り歯磨きペーストに使われるフッ素は、フッ化ナトリウム水溶液で、
象牙質を丈夫にし虫歯予防効果が検証されています。
ですから市販されている歯磨き剤は、ほとんどフッ素化合物入りで、
主体になっているものは研磨剤のリン酸カルシウム、あるいは炭酸カルシウムです。
ところでフッ素は緑茶にも含まれていますので、お茶を飲む習慣の日本人は、
自然に歯の予防もしていることにもなります。
とにかく、歯の有難味がわかるのは、歯を失ってみてからです。
生活の質を高めるためにも、また健康な肉体を維持して、
ボケ老人にならないためにも、虫歯予防を心掛けましょう。
80歳で20本の歯を残す、この心掛けが長寿の第一歩です。
頑張りましょう。