~高血圧の原因はストレス~
(健康になりたいという病で医者が潤う)
90歳を過ぎてから、同年配の会合や食事会飲み会などはほとんどなくなり、
年下の方々との付き合いが多くなりました。
そんな会合の一つに7、8年前から春夏秋冬年4回ほど夕食を共にする
4人のメンバーがいます。
この中に73歳と一番若い医師のF先生がいます。
この先生は現在の日本の医療制度や健康管理について一家言を持っていて、
ユニークで面白い。
何が面白いかと言いますと、例えば
「俺は医者で病気を治すのが仕事だが、無理やり手術をしたり投薬を
したりして、もっと生きられる寿命を短くする医者をたくさん見ている、
そんなバカなことをしたくない。無駄な延命治療をしてお金をかけることに
疑問を持っている」
と断言し「手術や延命治療は稼げるから医者はやりたがる、それは
患者のためにはならない」と続けます。
昨年の秋に面会した私が「前立腺がんにかかってホルモン治療をしている」
と報告すると
「前立腺のがんは他の臓器などにできる癌と性質が違い、ホルモンが作用
してできた癌で、放っておいてもそれで死ぬようなことはない。
手術をしたり放射線治療の後遺症で悩む人も多い、老人男性の30%、
いやそれ以上が前立腺の異常があるが、放っておいてもそれでは死んでない」
と言い切ります。
この先生はある病院の院長ですが、この病院は老人患者が多く終末を迎える
看取り看護のような病院で、多くの天寿を迎える患者を診ているだけに、
終末の病状と死因と対処医療について独自の考えを持ってるのでしょう。
また高血圧診断についても
「人間、歳を取ってくると、血管が自然と固くなり、血液を体の隅々まで
運ぶにそれなりの押し出す力が必要です。
だからどうしても血圧は自然と高くなる、それを血圧学会などは
上(収縮期血圧)を130以下、下(拡張期血圧)を70以下にしろと
言うが、老人は無理なのです。
そこで薬で下げようとする、薬を売るための数字かもしれない。
気を付けなくてはいけないのは、すべての降圧剤がよいのではなく、
自分に合った薬を選ぶことで、薬害の心配もある。」
と持論を展開します。
たしかに一理あり、私も65歳に大病をした後、体質が変わったのか
高血圧症状となり、血圧降下剤を服用するようになり、目下は血圧学会が
指示する正常血圧数値で経過し、私の主治医は至極満足です。
ただこの平常の血圧が、薬剤によって作られたものか、私の身体の恒常性に
よるものかの判断ができません。
また私は大豆原料の抗酸化剤で血管と血液が酸化せず、また硬化や血栓を
防ぐサプリメントを服用してますので、どちらの効果かもわかりません。
時として薬を止めて様子を見ようと思いますが、やめたとたん血管に
負荷がかかり、問題が起きることも心配すると、決断できません。
ことに血管と血流に関する薬だけに心配です。
ところが時として低血圧になるときもあり、ことに夏季の低血圧の時は、
降圧剤服用を止めますが血圧は高くなりません、4週間分の薬が5週目まで
あるとということは、飲まない日があるのに血圧の異常はありません。
90歳を過ぎってからは、少食になりアルコールの量も減り、あまり
くよくよしないようにしていることが血圧に影響してるのかもしれません。
「血圧は遺伝的体質もあるが、生活習慣によることもあり、よく身体を
動かし、あまり贅沢な食事をせず、タバコを吸わず、暴飲暴食をせず、
肥満を防いでくよくよ心配しないでストレスを避ければ、血圧を気に
しないでいる方が健康です。」
F先生が言うことが正しいかもしれません。
さて、厚労省は「健康日本」とのタイトルで、病気の早期発見と迅速な
対応により、疾病を少なくする目的で「特定健康診査」「特定保健指導」
と銘打って、40歳から74歳までの成人の健康診断を、職場などで
半強制的に実施しています。
75歳以上になりますと高齢者医療制度の中で、任意に検診を受けるようで
強制はなくなりますが、何かの疾病を持っている人が多く、かかりつけの
医者は必ず生化学検査を進め、血液で判断できる体の異常を知りたがります。
私も66歳以後、高血圧対策のため、医者からの指示で年2回は実地
していましたが、85歳過ぎからは年1回になりました。
若いときは肉体も細胞も若いため変化が激しく、年2回必要だったが、
細胞活性が衰えた年齢になったので1回でよくなったのかもしれません。
ことに90歳を過ぎてからは、数値の変化も少なく一喜一憂する数字に
なりません。
もっとも血液検査の項目の多くが適正数値として表記されますが、
ある項目数値が正常値と異なりますと体の異常を示唆する信号となり、
その異常の早期発見により、病状が進行することを防ぐケースも
確かにあると思います。
本質的には自分の身体と血液の状態を、生化学的に知っていることは
無駄ではないと思いますが、その検査が恒常的になり、何回も繰り返して
いますと、時として基準値を超えたり、低かったりの数字が出ますが、
次の検査では正常値になるなどと、変動することも多いのであまり
気にならなくなります。
人によっては、検査後これらの数値がどうなっているかを心待ちにして、
前回より今回は良かったとか悪くなったとかで気にしたり、喜んだりする
傾向もあります。
まるで学生時代、学業試験の答案成績が上がったか、下がったかで
喜んだり、沈んだりした状態と同じ感覚で受け止めてる人も多いです。
その反面これらの数値が気になり、精神的に影響をきたす人もいるようで、
この検査がストレスになるということです。
ところで医者によっては、この検査は問診や触診と違い科学的に数値で
表してくれるだけに信用します。
だから異常値が出たことだけを問題にし、対策として対応できる薬を
安易に勧めることもあります。
病気を知ることも、治療することも、自分の診断の感覚や感性より、
機械的に分析する血液数値のほうを信用し、その異常数値にはこの薬で
対応というマニュアルによって勧めれば、大過ないということです。
なかでも高脂血症、高血糖、肝機能異常、高尿酸など、これら慢性病に
なりやすい病気に対して神経質で、また薬を勧めやすいです。
ことに「特定保健指導」とうたわれた検査は、身長、体重、腹囲、血圧、
血流、血糖、コレステロール値の測定は必修で、メタボリック症候群を
無くすことで、生活習慣病の発生を防ごうと言うことです。
それが「健康日本」の目的で、慢性的疾病を防げば医療費の節約になる
という発想もそこにあります。
ある時これらの「特定検査」ついてF先生と意見の交換をしたことがあり、
「半強制的に行う検査など必要ない、医療費の無駄だ」と言い切ります。
つづけて「こんな検査をしている国は日本だけで、欧米各国は過去に同じ
ことをしたが、国民の健康効果向上と、病気発生低下には繋がらなかったと
実施を止めている。」
「ヨーロッパのある国の例だが、健診を定期的行い、健康指導のため
栄養チェック、運動促進、砂糖、塩分控えめ、タバコ、アルコール禁止の
健康生活グループと、健診も何もしない普通の生活グループに分けて
テストをしたら、健康生活グループの方が、疾病が多く、癌や血管系の
病気もあったが、反面普通の生活グループは健康状態がすこぶるよかった
との報告があります。」
『何年ぐらいのテストで、テストグループの数は?』と問いますと、
「確か10年間ぐらい長期間で、両グループ18万名ぐらいだったかな。」
『その検査の信頼性は高い、なんでこんな結果になったのかな?』
「報告によると、健康管理と検診がストレスとなり、かえって病気発生の
引き金になったようだ、普通の生活で健康を気にしないとストレスが少ない、
だから健康診断を受けていても健康にはならない。」
『常識的には健康診断で、問題を早期に発見し早期に対応した方が
結果良いと思う、実際日本は長寿国として世界に知られているのも
健康診断が役立っているのでは?』と問うと、
「確かに若干は寄与しているかもしれないが、検診が万能でないし、
分析数値の状態もいつも同じではない、季節や食事の内容や肉体や精神への
負荷がかかった時と、リラックスの時とでも違う、血圧などその典型だ。」
『そういえば数年前コレステロール値が少し高いからと投薬を勧められたが
断った、今は正常値で医者は何も言わない、なぜ薬を勧めたか分からない。』
「その通り、コレステロールや中性脂肪などは食事の影響があるし、
そもそもコレステロールは体の中で作っているもの、必要だから作る、
少し高い方が長生きしてるとの報告も多い、医者はすぐ薬という。
製薬会社とタイアップしてるからかな、また検診も人間ドックもお金に
なるから勧めるのかな。」
『医者も病院も、検診も薬も商売ということですか?』と問うと、
「そうです、健康を売る商売です。
日本は医療保険が充実していて、個人負担が少ないので健康な人までが
病院に行きたがる。
他の国では自己負担だから医者に行かない。
医者に行かなくても自然治癒で治る。
ほんとはこの自然治癒力を高める指導が必要で、いまの日本は一般人が
健康診断で病気の知識が増え、健康への関心が高くなり、健康になりたい
という欲望が強くなった。
これも一種の健康要求という病気だ。」と笑います。
『だから健康診断や血液検査の結果に一喜一憂する。
それも病気というのでしょうか。
私は年1回やる健康診断は年ごとの身体の修業証書みたいなものと
考えていて、今年も去年と同じ成績で修業したとみています。
この成績数値が異常をきたした時、まもなく人生の終業か来るとの
判断材料になるのでしょう。』
「貴方の場合検診数字に異常は出ませんよ。
異常も変化もないまま終業が出ることが、世に言う大往生で医学的には
老衰と言います。」
『私の健康状態をほめているのですか?
足腰は悪く歩行器で歩いている私ですよ。』
「90歳過ぎで顔艶もよく、目も耳にも障害がなく頭の回転もよい、
こんな元気な爺さんは成人病では死なない。
健康診断の血清検査の異常が原因になることはないと思う。
腰痛や歩行困難で、まして前立腺がんでは死なない。」
『それは医者としての見立てですね。ありがとうございます。』
2024年1月10日
おくむら よしみ