~人工知能のAI、人工授精のAI、鳥インフルエンザのAI~
(時代変化で変わる三つのAIのこれから)
いまAIと言う言葉をよく見聞きするようになっています、人々の会話や
テレビや新聞や雑誌に頻繁に登場します。
ところで私の今までの経験から、AIという言葉に関係した出来事が
3つあります。
その第1番のAIは今、ほぼ毎日見聞きする「Artificial
Intilligience( アーティフィシャル インテリジェンス)」の
略語の頭文字のAIです。
日本語訳は人工知能で、いま最も期待値の高いAIですが、私が知った
AIとしては最も新しいものです。
ご存知のよう人工知能の意味は、人間が作り出した機械的知能で、
この人工知能が人間の頭脳と同等の能力を持ち、時としては人間を
凌駕する適切な判断を迅速に行えるということで、近未来の
人間社会と生活に変革をもたらすと、期待もされている技術です。
殊に多くのデータ入力で学習したコンピューター機能は、翻訳や作文、
学術書の要約などの分野ではすでに役立っており、ロボット技術と
組み合わせれば、自動車や電車の自動運転や、物づくりの製造現場では
無人工場となり、小説、彫刻、絵画などの芸術作品、果てはゲームまで
簡単に作り出す潜在能力があるといわれます。
期待されるAI機能は、あらゆる社会の情報処理で、行政の判断と実行、
金融や証券市場のなどの数字的機能促進、医療、教育、娯楽や未来予測
などまだまだ計り知れない機能が内蔵されているようです。
人間が作った人間の知能を超えた人工知能のAIですが、その功罪も
論じられ、難しさもあります。
それらはのちに触れましょう。
次に私が初めて使ったAIという作業は、人工授精
「Artificial Insemination(アーテフィシャル インザミネーション)」
でした。
今から65年ほど前、近所の孵化場から肉用の雛生産の目的で、私が飼育
していた大型の卵肉兼用種、赤玉を産む横斑プリマスロック、
ロードアイランドレッドに、肉用専用の雄鶏白色コーニュッシュの精液を
人工授精して、種卵の生産を依頼されました。
ケージ飼育していた大型採卵鶏に、針のない注射器に似た注入器具を使い、
1人が1羽づつ鶏をケージから取り出し、もう1人が肛門に0.2cc
ほどの雄鶏の精液を注入する2人1組の作業で、種卵を生産しました。
この種卵から孵化された雛は、ブロイラー生産用のセミ専用種として
売られ、若鳥ブロイラー肉が生産され、それまでの廃鶏と違う軟らかな
鶏肉として市場で評価されました。
やがてブロイラー産業は、肉専門の大型雌に変わり、飼育方式も
ケージ飼育から平飼いの自然交配となり、私が行った人工授精も
4年ほどで終わりました。
その後、養鶏をやめ、商社の畜産部に籍を置いたとき、牛や豚の人工授精も
勉強しました。
大動物の人工授精による家畜産業の合理化と進歩がはかられた推移を、
目のあたりにしました。
これらはのちに触れましょう。
次にAIという言葉で養鶏家同士の会話に使われたのが「Avian Influenza
(エビアン インフルンザ)」、家禽インフルエンザ、即ち
鳥インフルエンザです。
このAIの鳥インフルエンザは、今では養鶏関係者だけでなく世界中の
一般人が知る言葉になり、鶏卵や鶏肉の価格に影響し、はては新型の
インフルエンザとして人間への感染も恐れられているウイルス性の
伝染病です。
約20年前ほど前に中国で発症がみられ、それが現在は世界中に蔓延したと
言ってよいほど、この病気発生で悩まされています。
コロナが人間に発症するパンデミックスとしたら、鳥インフルエンザは
家禽のパンデミックスです。
Avian(エビアン)とは家禽と訳されます。
ゆえに鶏だけでなくウズラやアヒル、ガチョウなど飼育される鳥類
すべてに被害をもたらすもので、そもそもが水鳥が持っていた
ウイルスで、鶏に感染すると最も被害が出る困った病気です。
この感染媒体は渡り鳥で、保菌鳥となり国境を越えてウイルスを持ち運ぶ
ので、一国だけの防疫で対処するのは難しさがあります。
さてこの3つのAIについてさらにエピソードを加えましょう。
まず人工授精のAIですが、目下は鶏は産業用としては使われず、研究用
には少しはあると思いますが、大動物の牛や豚の産業には大いに利用
されてます。
ことに大動物の人工授精は畜産の改良には大いに役立ち、優秀な子孫が
世界の乳牛や肉牛生産に寄与しています。
一つの例をとれば遺伝的に優秀な系統で、市場性の高い雄牛の精液や、
雌牛の卵子をつかい、優秀な子孫を沢山生産する改良の素材として
普及されています。
これらの雄牛の精液の多くが、人工授精用としてと凍結保存され、
経時変化に耐え、凍結容器に入れられ簡便に移動できるので国際的
にも流通が簡単です。
酪農家も肉牛繁殖農場も凍結精液だけを購入し、飼育している雌牛に
人工授精させる、つまり雄牛を飼育することなく合理的に優秀な子牛を
生産できるので、経済的にも時間的にも優位があり、今や自然交配から、
99%が人工授精に変わりました。
その中でも進んだ人工的繁殖法にETがあります。
ET(Embryo Transfer)とは受精卵胎児の移動です
その方法は、まず優秀な雄牛から採取した精液をとり、優秀な雌牛に
排卵促進ホルモン剤を飲ませ、タイミングを計りAI人工授精を行います。
たとえば排卵剤の影響で5個の優秀な受精卵が子宮の中で着床しますと、
すなわち5卵性の五つ子ができます。
その受精卵を取り出し、5頭の普通牛の子宮にそれぞれ植え付けますと、
普通牛から系統的に優秀な子牛が、一遍に5頭誕生する技術です。
普通牛の子宮を借りる、借り腹出産です。
これがET(受精卵、胎児移動)という作業です。
日本の酪農産業の歴史は、酪農先進国のヨーロッパやアメリカなどから、
生きた種の雄や雌を輸入し、改良発展してきましたが、今から50年前には
凍結した優秀な精液を輸入し、その凍結精液が乳量の拡大に寄与する
産業構造に変わりました。
そうして現在は、凍結精液の流通から、さらに進んで受精卵輸入に
変わってきています。
まさに時代が大きく変化しています。
大きな生きた種牛を船で何日もかけて輸入し、動物検疫場で2週間
隔離飼育し、疾病がないことを確認し、ようやく農家に届けられた昔を
知るだけに、まさに今昔の感です。
養豚の世界でも人工授精AIは普及しています。
昔の農家副業の養豚業は、子豚生産業者から子豚を購入、それを出荷体重に
育てる養豚業でしたが、現在は全て自社農場内で親豚を飼育し、子豚を生産、
それを肉豚に育てています。
この繁殖には、発情した雌豚に雄豚を掛け合わせる自然交配の方法と、
発情雌を種雄に見せ雌豚に似た疑似台に乗せ、精液を絞りその精液の活性を
助ける増量液で希釈し、10頭近い雌豚にカテーテルを使い子宮に注入する
方法が多く取られます。
自然交配ですと、1頭の雄と1頭の雌ですが、人工授精ですと10頭の雌に
授精できる合理性と経済性があります。
この人工授精では受胎率も高く、1頭の雌からの産仔数が、10頭以上の
多産となります。
ちなみに私の会社でも注入機材のカテーテルと、精液の希釈剤の販売を
行っています。
家畜だけでなくペットの繁殖にもAIが活用されていることはご存知と
思います。
ところで、様々な話題提供と、深刻な問題を残すのが人間に行われる
AI人工授精です。
一番知られているのが配偶者間でのAIで、男性の精子数が少なく、
また活性が弱かったり、何かの障害で子宮内に精子がとどかないなどの
不妊を解消するため、採取した夫の精液を注入器を使い子宮まで入れる
人工授精で、多くの成功を見ます。
これをAIHと言いますHはHusband(ハズバンド)のHです。
一方配偶者同志でなく、非配偶者の精子や卵子で行われるのが、
AIDで、Dはdonoa(ドナー)です。
まさに牛の雄の凍結精液を購入する出産と同じ理屈で、中には胎児移植と
同じ手段で子供を持つ方法もあるようです。
このAIDの人工授精と胎児移動は、まだ難しい問題があり、私の判断を
超えますので、ここでは言及しません。
さて鳥インフルエンザのAIは困った問題です。
発生を抑える方法として、徹底した感染を防ぐ防疫体制が取られていますが、
これは消極的防御で、野鳥や野ネズミ、昆虫やハエなどが保菌者となり、
知らずのうち鶏舎に入り感染発病の危険があります。
積極的にはワクチン開発と、罹病しない免疫力を持った育種改良ですが、
近道はワクチンによる免疫付加です。
難しいと言われたコロナウイルスも、mRNAの新機軸のワクチン開発で
対応できました。
現在の生化学の技術をもってすれば不可能ではないでしょう。
また世界中に発症がみられるこの病気、渡り鳥によるウイルス拡散が
考えられるだけに、国際間の雛や鶏肉の輸入規制で感染を防ぐことは
無意味で、この輸入検疫の見直しや、全群殺処分で経済的損失のことを
考える時期に来ていると思います。
最後に近い将来に利用される人工頭脳のAIを考えましょう。
このAIの活用普及は、年を追うごとに急増していると思われますが、
92歳の私がこれからの生活の中で、どれだけ影響されるのか、自分自身
ではわかりません。
ただAIの走りの、PCやスマホなどが、今の生活の中に浸透
しているので、すでにAIに馴染んでいるとも言えます。
人間がこのAI技術をどのように使うか、またこの人工知能を活用
させるかは人間の知性と常識とモラルにかかっています。
政治や社会や産業、健康、教育の分野で人間の生活を豊かに、また簡便に
することは、問題ないでしょうが、社会を混乱させたりフェイクな現象で
困惑させる弊害、果ては戦争のための新しいテクノロジーに利用される
ことのないことを願うばかりです。
さらにAIを活用するのだけでなく、AIに頼り人間が怠惰になり、
劣化することも恐れます。
人間が、人間が作った人工的知能に支配されないことを祈ってこの稿を
終わります。
2024年2月5日
おくむら よしみ