〜安全できれいな有機畜産物に変わる韓国〜
(薬漬けの肉生産からの脱却)
以前、このブログの中で、韓国の「グリーングロス」のことに触れたことがありました。
「国土を低炭素、低化学物質に変えて、緑豊かな大地とし、有機質エネルギー活用を活発化しよう」との試みで、2008年8月現在の李大統領が発表したもので、その目的のために新しい流れが出来ようとしています。
そのひとつの例が農業です。農作物への薬品や化学肥料使用の低減、畜産生産物への薬品の使用の配慮など、このグリーングロスが発表されてから、農業者、畜産業者へ対する意識の変革を強く求めてきました。
ことに農業に対しての施策は、農薬、化学肥料を使用しない、有機農産物生産に必要な有機資材について、政府が審査し合格したものは、価格の50%を補助する政策を実行しています。
おかげで、私どもの取り扱い資材「フミン物質」がそれに該当し、生産性の向上もあいまって、かなりの普及率になっていることは事実です。
こんな動きが畜産業に最も波及し、2011年7月から飼料に添加される抗生物質、抗菌剤の全面的禁止が政府通達でなされました。
これはすごいことです。驚きです。
なぜすごいことかと言いますと、世界の畜産業は日本も韓国も含め、抗生物質などの薬品がないと成り立たない業界だからです。
畜産業はよく薬漬け産業と悪口をいわれていますが、そういわれても仕方がないところもございます。
ことに動物が毎日食べる配合飼料に添加されている抗生物質が、薬漬けの汚名の根源になっています。
添加されている目的は、もちろん病気予防がありますが、主な目的は成長促進効果です。
畜産農家や飼料配合業者の誰でもが、抗生物質の添加はよくないことで、できたらやめたいとも言いますが、それが出来ないところが、畜産業の宿命、利益優先、コスト削減の思想があるからです。
薬品の多くは化学合成剤で、大量生産が可能な製剤だけに、飼料などに添加すれば大量消費がなされ、その分生産コストが安くなり、効果に対する必要経費が下がります、そこに製薬会社も飼料会社も利益のポイントがあるので、継続使用の状態が続きます。
これらの薬は、畜産業者や飼料業者が勝手に使っているわけではなく、農水省の畜産局より使用の許可が認められている薬で、抗生物質としては強力なものではなく、広範囲に効くけど人体や動物にはあまり影響がないものと言われています。
その昔私は、養鶏のコンサルタントとして、日本を始めタイ国、韓国、台湾、中国などの養鶏の技術指導をした経験があります。
その頃から東アジアと東南アジア諸国は、日本政府が許可している弱い抗生物質はもとより、治療用の強い薬を含め、薬付け養鶏、養豚の様相で「餌を食べさせているのか薬を食べさせているのか分からない」と私は冗談を言っていたほどでした。
それらの薬は、世界的に名の通ったビックな化学会社のもで、大量生産大量販売の鉄則に沿って、その販促方法は数量メリットを強調し、価格ダンピングも行われ、大量消費をあおった結果、薬漬けにもなりました。
輸入ブロイラーから、基準をはるかに超えた、残留薬品が検出され、また耐性菌問題では食肉に使われている抗生物質の残留が、大いに影響されているとも論じられました。
アメリカ政府も、薬依存の現行の畜産生産に絶えず警鐘を鳴らしていましたが、生産者や薬品メーカーなどの圧力で、減薬が実行できないでいましたが、最近は少しずつ前進し、消費者志向に変えることに成功しつつあるようです。
唯一ヨーロッパ諸国は数年前から、飼料への薬品添加は全面的に禁止し、さらに動物愛護の面から飼育状態の改善までかなり進んだ、畜産経営の理念に変更しています。
日本はじめ東アジア、東南アジアの国々でも、考えとして無薬生産物に取り組みたいとの農場もありますが、現実なかなか実行はされない、薬依存の生産体制でした。
私は、このような薬漬けの養鶏や養豚、肉牛生産を目のあたりにし、これを是正する必要を強く感じ、人間や動物に薬害のない畜産用生菌剤(プロバイオチック)開発を志向しました。
いずれにしろ薬に代替できるものがなければ薬はやめられません。台湾の私の古い友人林慶福博士に協力を依頼し、ようようにして代替生菌剤生産の運びとなったのが10年前です。
その生菌剤は幸いなことに、日本市場では認められある程度のマーケットを得ることが出来、さらに韓国の一部でも使用されるようになりました。
その韓国で、飼料添加の抗生物質を全面禁止の通達が政府から発令されたのです。
勿論これは韓国国民に薬の残留のない安全な食品を食べさせる目的が第一ですが、化学薬品の多投が糞尿を通して、大地と河川の化学汚染に繋がり、グリーングロスの精神に相反するのも、禁止の要因と思えます。
しかしこの通達は、韓国の畜産業者に少なからず大きな衝撃となりました。
そこで抗生物質代替素材として、私どもの生菌剤が、にわかに脚光を浴びてきました。
もとより、この生菌剤を使って無薬鶏肉を生産していた会社もすでにありますが、全体としては少数で目立つものではありませんでした。
ところがこれからの無薬生産物には、本格的に検討する素材のひとつであることには変わりません。
さらに抗生物質に代替できる生菌剤はそれほど多くはありません。韓国にも国産の生菌剤が多数あり、諸外国からの輸入物も数多くありますが、病気を治すところまでのものは少なく、また安定性に問題のあるものも散見されるので、安定性と効能から私どものものが最も注目されていると、当社の韓国代理店からの話です。
そんなこんなで、韓国からの引き合いが、活発化し始めました。
薬に変わる安全製剤を標榜して開発した商品ですから、注目されることは本望ですし、またその期待に沿うような商品に、一層磨きをかけなければいけないかもしれません。
その選択肢は様々あり、いろいろの組み合わせを模索することになるでしょう。
その結果韓国の大胆な試みが成功することが、私の畜産人としての目的ですし、美しく安全な、鳥肉、豚肉、牛肉、卵と牛乳が消費者に渡ることが、本来の畜産の使命と思っています。
さて、韓国の畜産関係者との会談がいろいろ行われてます。その現実の話は次回に譲りましょう。